建設用3Dプリンタを開発するPolyuse(東京都港区)が、MAT一級建築士事務所(群馬県吾妻郡)による設計をもとに、3Dプリンタで出力・造形した部材を用いて、建築基準法に適合した建築物の施工を行ったことを発表しました(2022年2月15日プレスリリース)。
同社の調べおよび発表によれば、本件は、3Dプリンタ施工による、日本国内における初の建築確認申請取得の建築物になるとのこと。
建設用3Dプリンタは、2012年頃より開発が活発に行われているものの、ヨーロッパや中国、シンガポールなどの海外諸国での研究が進んでいます。建設用3Dプリンタを用いた住宅なども実際に施工され、海外企業が業界を牽引しています。
翻って、日本国内では、地震、台風などの自然災害から人々の生活を守るための建築基準法が、建造物を建てる際の基準として大きく存在しており、この法に準拠していかに建設用3Dプリンタを活用し、施工すべきかが、長らく未実証の課題となっていました。
今回、PolyuseとMAT一級建築士事務所(代表取締役 田中朋亨)の2社が協力し、3Dプリンティング建築を施工したサイトは、群馬県渋川市内。同市に建築確認申請を行い、建築基準法第6条第1項が定める規定に適合しているという確認済証を、令和4年(2022年)1月24日付けで取得しています。
構造物のサイズは、横幅約6m、奥行きは約3〜4m、高さ約3mの「平家建て」。敷地面積は、建築確認申請が不要となる10m²以下のコンテナやユニットハウス、タイニーハウスではなく、人が暮らすうえで必要なサニタリーやインテリアを設置できる面積を確保した、17m²以上の広さを確保しています[*2]。
*2.渋川市公布の確認済証より(Polyuse 2月15日プレスリリースにて公開)
主要用途:一戸建ての住宅(申請建物:倉庫)
工事種別:増築
階数:1階
延べ面積(建物全体):17.96m²
部材製造・施工:Polyuse
設計・施工:MAT一級建築士事務所
https://www.mat-tomo.com/
作業分担は、MAT一級建築士事務所が設計、施工を担当。Polyuseは、建設用3Dプリンタの建築部材の造形を担当しました。事前に工場で出力した部材を、現場に運搬してから組み立て、施工しています。
今回、3Dプリンタで造形したのは、建設用3Dプリンタが得意とするR形状を含む、12個の建築部材。
各部材は、内部を含めてモルタル素材を充填して造形。これにより、建材として密な状態を保ち、強度を確保しているとのこと(本プロジェクトでは、今回の施工に先立ち実施した複数回の強度試験により、従来の標準的コンクリート製の外壁施工時に適応される基準以上の強度を確認している)。
部材の出力から施工が完了する前の所要日数は、約1カ月。
まず、3DPの出力工場にて、高さ150cmまでの内部空間を満たすのに必要な部材の出力に4〜6時間ほど。今回のプロジェクトの全部材の製造には、約10日間を要しています。この間、現場では並行して基礎打ち工事を行い、現地での部材組み立てに2日間。その後に屋根などを組み、内装仕上げなどを行うと、従前では同等のボリュームを建てるのに2カ月ほどかかるところ、半分の工期で終了できるとのこと。
このように、3Dプリンタによる建築施工では、型枠を作り、型枠内部にコンクリートを充填し、養生して硬化させるという従来型の構築方法とは異なる施工方法により、現場での施工時間を一気に短縮し、専門の職人雇用にかかる人件費も圧縮できるメリットがあります。
Polyuseでは、本プロジェクトの遂行により、海外で先行する建設用3Dプリンティング建築の国内適応技術を実証・確立させ、建設現場への適応事例を加速させていく計画です。(en)
Polyuse 会社概要
Polyuse(ポリウス)は、2019年創業(代表取締役CEO 岩本卓也 / 代表取締役COO 大岡 航)。建設用3Dプリンタを中心とした建設業界特化型の技術開発およびサービスを提供している。2021年には、国内初の実利用の土木構造物や、国内初の民間の実案件工事での適応などを実施。2021年12月には、国土交通省中国地方整備局広島国道事務所「令和2年度安芸バイパス寺分地区第4改良工事」において、国内初の産官学が連携した実証実験を実施。また、国内における唯一の建設用3Dプリンタメーカーとして、専門性の高い技術者を確保し、開発体制を構築することによって、国内での適応を迅速に推進し、建設業回において将来的に見込まれる人手不足の一助となるプロダクトの開発に勤めている。
株式会社Polyuse
https://polyuse.xyz/
本件プレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000049711.html