BUSINESS

DOMINO ARCHITECTSが参画する「FOREST REGENERATIVE PROJECT」

札幌市内で多様な動植物による森林活性化実験を行う都市近接型モデルファームを建設

BUSINESS2022.02.18

北海道・日高町に本社を構えるユートピアアグリカルチャーによる、森林を再生させながら、放牧酪農および養鶏を行う施設の設置ならびに実験も行うプロジェクト「FOREST REGENERATIVE PROJECT」が、同社が取得した札幌市盤渓をサイトとして始まります。

放牧酪農の一種である山地酪農のための実験施設(モデルファーム)の全体計画と設計を、建築家の大野友資氏が代表を務めるDOMINO ARCHITECTSが担当。雪解け後に着工し、今年8月の竣工を目指すとのこと(UA 2月18日プレスリリース)。

ユートピアアグリカルチャー(UTOPIA AGRICULTURE / 略称:UA)を率いるのは、札幌市内に洋菓子店を多数展開する「きのとや」創業家出身の長沼真太郎氏。
同社は、「地球、動物、人に優しい牧場運営の実験と、その材料を使った美味しいお菓子作り」を企業理念として掲げ、「GRAZE EXPERIMENTS」をテーマに、美味しい菓子づくりのために美味しい原材料を追求した結果として、放牧による牛乳づくりに挑戦しています。

ユートピアアグリカルチャー

2020年5月には、北海道大学 農学部 環境生命地球化学研究室(室長:内田義崇准教授)との共同リサーチプロジェクトを始動(UA 2021年2月18日プレスリリース)。放牧による牧場運営において、エサ、牛、糞、土壌に窒素(栄養素)がどのように循環するのか、温室効果ガス(CO2やメタンガスなど)の発生量と地中吸収量を数値化するといった現実的な削減可否の研究を、産学連携で進めてきました。

FOREST REGENERATIVE PROJECT

「FOREST REGENERATIVE PROJECT」における循環イメージ

2022年2月18日に概要が発表された今回のプロジェクト「FOREST REGENERATIVE PROJECT」は、「都市近接型で行う、多様な動物と植物による森の活性化実験のモデルファーム」を建設するもので、UAが進める放牧実験を象徴する場として計画されています。計画にあたり、前述・北大農学部内田研究室とのリサーチ内容が反映されています。

FOREST REGENERATIVE PROJECT

©︎ DOMINO ARCHITECTS

計画地の盤渓(ばんけい)は、札幌市中心部に位置し、エリアにはスキー場もある森林地帯。UAがここに東京ドーム4個分の土地を取得した理由は大きく2つあり、1つには、本プロジェクトに携わるメンバーや酪農研究者の居住地が、札幌市をはじめ都市部であること。プロジェクトを継続させていくために、負担の少ない現実的な移動距離を確保しています。
もう1つは、人手不足などで健全な森林の維持が困難になっている、日本の林業における深刻な課題解決への実験的アプローチです。山地酪農をこの地に持ち込むことで、温室効果ガスの吸収能力が低下した「死んだ森」になることを回避し、多様な動物と植物によって森の再生を目指すという、長期的な実験プロジェクトとなります。

「FOREST REGENERATIVE PROJECT」プロジェクトメンバー

「FOREST REGENERATIVE PROJECT」プロジェクトメンバー

プロジェクトメンバーは、多彩な顔ぶれ(プロフィール詳細は後述)。前述・内田研究室が引き続き参画し、建築領域をDOMINO ARCHITECTSが担当するほか、人と動植物が関わる「生命の循環」の研究と社会実装を目指す研究者・片野晃輔氏がランドスケープを設計。施設で採れた卵を販売する自動販売機の企画設計を、東京2020オリンピック・パラリンピックで聖火台のエンジニアリングを手がけたクリエイティブスタジオnomenaの武井祥平氏が担当します。

FOREST REGENERATIVE PROJECT

©︎ DOMINO ARCHITECTS

FOREST REGENERATIVE PROJECT

©︎ DOMINO ARCHITECTS

プロジェクトの初期段階では、鶏舎2棟と牛や馬が10頭程度休める場所と、卵の出荷施設が建てられます。小さな牧舎と鶏舎、そして配送施設からスタートし、数年単位で実験を進めることで、森と動物と人の新しい関係性(UAが考える真のリジェネレイティブアグリカルチャー)を築いていく計画です。
さらに、カフェやレストラン、ホテルなどを建設し、ユーザーを巻き込みながらプロジェクトを推進できるよう、体験型施設の追加建設も構想されています。


プロジェクトメンバー(略歴・敬称略とコメント)

施設設計:DOMINO ARCHITECTS 大野友資
DOMINO ARCHITECTS代表、FICCIONES所属、東京藝術大学非常勤講師、一級建築士
1983年ドイツ生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院修士課程修了。カヒーリョ・ダ・グラサ・アルキテットス(リスボン)、ノイズ(東京/台北)を経て2016年独立。2011年より東京藝術大学非常勤講師を兼任。
https://dominoarchitects.com/

大野友資 近影

「牛や鶏の為の建築を設計するのは初めてですが、動物も植物も人も微勢物もひっくるめてダイナミックに進んでいくこのプロジェクトを楽しんでいます。盤渓に元々あったような、でもとても新しいような、そんな風景を作れるよう頑張ります。」


ランドスケープデザイン:片野晃輔
1997年新潟生まれ。中学時代、母の乳がんがきっかけで分子生物学に関心を持ち、高校時代は企業や大学のラボを利用し個人で研究。高校卒業後、MIT Media LabにてSynthetic Neurobiologyグループ、Community Biotechnologyグループにて研究員として活動。帰国後、Sony CSL、一般社団法人シネコカルチャーにて拡張生態系の研究に携わる。現在は個人事業主として「生命の連環を起こす」という思想を軸に研究活動、企業への助言や造園ユニットとしての造園/空間設計など分野問わず活動している。

片野晃輔 近影

「酪農と生態系の構築が両立できる手法の探索には、予(かね)てから関心があったので、非常にワクワクしています。本プロジェクトを通して、身近な暮らしでの持続可能な生態系との付き合い方を皆さんと考えられたら幸いです。」


無人販売所システム設計:武井祥平
1984年岐阜県生まれ。高専で電気工学、大学で認知心理学を専攻。2006~2010年株式会社丹青社。2012年東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。同年クリエイティブスタジオnomena設立。
https://nomena.co.jp/work

武井祥平 近影

「私はものづくりを生業としています。私たちの生産活動が地球にとってマイナスとならないためにはどうすればよいか。FOREST REGENERATIVE PROJECTには、その課題に対するひとつの糸口を見い出したいという思いで携わっています。」


ユートピアアグリカルチャーメンバー

ユートピアアグリカルチャー代表取締役 長沼真太郎
2013年に株式会社BAKEを創業し代表取締役に就任。2018年にBAKE退社。スタンフォード大学客員研究員を経て、2020年に株式会社ユートピアアグリカルチャーの代表取締役として再始動。

長沼真太郎 近影

「お菓子は毎日食べる必要のない嗜好品です。だからこそ、代替物ではなく本物の最高の原材料を求めて放牧酪農や平飼い養鶏場を始めました。本プロジェクトでは、これからもお菓子屋として本物の原材料を使い続けていくために、日本の重要資源である山の活用を視野に入れ、動物がいかに山を再生していくかを証明していきたいと思っています。」


北海道大学大学院農学研究院 環境生命地球化学研究室 内田義崇

2009年ニュージーランドリンカーン大学卒、2010年より農業環境技術研究所(現:農研機構・農業環境変動研究センター)に在籍。2013年に北海道大学大学院農学研究院に環境生命地球化学研究室を立ち上げ、現在は准教授としてこの研究室を運営している。
土壌微生物と酪農場における栄養バランス研究のほか、家畜糞尿由来廃棄物の農地散布を最適化するための衛星画像利用システムの開発、ザンビアにおける鉛汚染のメカニズムの解明と健康・経済リスク評価手法および予防・修復技術の開発プロジェクトに携わる。

内田義崇 近影

「今、世界の食糧生産を根本的に考え直す時期にきています。石炭など、いずれ無くなる資源を使った化学肥料の生産、大量のエネルギーを消費しつつ輸入される飼料、水質・大気汚染が指摘される酪農、畜産業ですが一方で生乳が余ることが大きなニュースとなりました。私達は何を、どう育て、どう食べるべきなのでしょうか? そんなことをすべての方々が考えるきっかけとなるプロジェクトとして期待をしていますし、研究者として存分に協力したいと思っています。」

ユートピアアグリカルチャー

「FOREST REGENERATIVE PROJECT」概要

計画地:北海道札幌市中央区盤渓375
着工予定:2022年春

施設設計:DOMINO ARCHITECTS / 大野友資
ランドスケープ設計:片野晃輔
無人販売所システム設計:武井祥平
リサーチ協力:北海道大学農学部 環境生命地球化学研究室(室長 内田義崇准教授)
事業主体者:株式会社ユートピアアグリカルチャー

「FOREST REGENERATIVE PROJECT」詳細(UAプレスリリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000073954.html

UA × 北大農学部 環境生命地球化学研究室 共同リサーチプロジェクト 詳細(UAプレスリリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000073954.html

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FOREST REGENERATIVE PROJECT(フォレスト リジェネラティブ プロジェクト)続報

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