CULTURE

2025年大阪・関西万博〈スイス パビリオン〉概要

ETFE膜構造の最軽量パビリオン、エコロジカルフットプリント(資源消費)も最小で建設

CULTURE2023.06.17

開催まであと666日。
2025年4月13日より、大阪市内で開催される日本国際博覧会(2025年大阪・関西万博)に出展する諸外国のパビリオンの情報です。

今年2月に概要が発表されているスイス連邦(以下、スイスと略)のパビリオンは、数あるパビリオンの中でも、サステナブルかつサーキュラーエコノミーへの貢献度が極めて高い、エコロジカルフットプリント(資源消費)が最も小さいパビリオンとなる見込みで、今後の建築工法としても注目されます。

2025年大阪・関西万博 スイスパビリオン模型

スイスパビリオン模型(提供:在日スイス大使館) ©︎ Sakurako Kuroda

スイスパビリオンは、フッ素系プラスチックのETFE(エチレンテトラフルオロエチレン)の膜で覆われた5つの球体で構成されます(オフィスエリアを除く)。
ETFEそのものが非常に軽量であり、リサイクルも100%可能な素材。万博終了後の用途もすでに決まっており、家具メーカーと共同で開発・デザインする家具(膨張性の着座式チェア)にアップサイクルされる予定です。

2025年大阪・関西万博 スイスパビリオン イメージ

スイスパビリオン 外観イメージ © FDFA, Presence Switzerland

球体の外殻は防水処理を施したETFE膜による空気膜構造(2層式)で、パビリオンの内部を空気膜構造としていないことが重要なポイントです。エアロックで内部の圧力を高く保つ必要がなく、万博開幕時に空気膜を形成しておけば、期間中は形状と気圧の質を維持することができるとのこと。

この2重膜の空気層に、雨風や強風、地震発生時の揺れにも耐えられる軽量鉄骨の構造体が隠されています。万博終了後の再利用を見越し、標準的な部材が採用されています。

展示テーマは、ライフ(生命科学、健康、栄養)、プラネット(環境、持続可能性、気候、エネルギー)、オーグメンテッドヒューマン(ロボット工学、人工知能)の3つ。パビリオンの1階にこれらの展示エリアを配置し、来館者の上下の動線をほぼなくすことで、建物への荷重を軽減しています。
最深新部に位置する球体は、地面ではなく、オフィスエリアの最上階に設置され、内部はカフェ&ルーフトップバーとショップとなります。

2025年大阪・関西万博 スイスパビリオン イメージ

ルーフトップバー © FDFA, Presence Switzerland

オフィスエリアは、モジュールを統一した部材で設計され、ファサードや床板には、CLT(Cross Laminated Timber / 直交集成板)パネルを採用。パビリオンの膜や鉄骨と同様に、リサイクルが可能な建材です。

さらにスイスパビリオンの特筆点は、一般的な基礎を敷設しないこと。再利用可能な標準的なプラスチックタンクの中に海水や砂を詰めて地中に埋設し、その上にパビリオンを建設するカウンターウェイト基礎(浮力対策)が計画されています。

膜材の総重量は300から400kg以下であり、これは従来の平均的なパビリオンに比べて建物外壁の1%でしかなく、運搬用の自転車2〜3台で搬送できる程度の重量とのこと(スイスパビリオン ファクトブックより)。パビリオン全体の軽量化により可能となったサステナブルな工法です。

「持続可能性(サステナブル)という言葉は、プロジェクトの表面的な魅力をアピールするためのキャッチコピーではありません。私たちは、2025年大阪・関西万博のスイスパビリオンを機に、このテーマを慎重かつ真摯に検討しようと考えています。

そのため、京都工芸繊維大学の学術研究部門、特に建築学科の一部であるKYOTO Design Labと協力関係を結び、研究プロジェクトを進めてきました。スイスパビリオンは、同ラボでこれまでに実施してきた研究とリサーチの結果が基になっています。同ラボの研究者、教授、学生と協力して、スイスパビリオンの計画段階から、解体、使用後までのライフサイクル全般を通して、社会、経済、生態系におけるフットプリントの改善を図るとともに、高い精度でデータを把握し、新しい素材や工法の将来性について議論し、出版物やデータベースとして社会や建築業界に対して提供できる知識を蓄積することを目指します。
プロジェクトの経過は、万博会期中にパビリオンで開催されるイベントで発表され、議論と共に共有される予定です。」(スイスパビリオン ファクトブックより抜粋)

2025年大阪・関西万博 スイスパビリオン イメージ

スイスパビリオン 外観イメージ(夜間) © FDFA, Presence Switzerland

スイスパビリオンの敷地内において、最も重いのが植栽です。日本国内で苗木から育てることで、搬入する植物の1kgあたりで1kgの二酸化炭素を大気中から取り除くことができるとしています(ファクトブックより)。

ETFE膜の球体を覆うように、藤の花を中心としたツル科の植物などが植えられ、会期が進むにつれて、淡い紫色に、夏には緑(Green)に覆われるパビリオンとなる見込みです。


NUSSLI GROUP YouTube「#Swiss Pavilion at Expo 2025 Osaka Revealed」(2023/02/01)

計画・設計チーム

・NUSSLI(二ュスリ)
・Manuel Herz Architekten(マヌエル・ヘルツ建築事務所)
・Bellprat Partner(ベルプラット・パートナー)
・Robin Winogrond(ロビン・ウイノグロンド)
・京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab [D-lab]
・AA-MORF

スイスパビリオン 公式ウェブサイト
https://houseofswitzerland.org/events/swiss-pavilion-expo-osaka

2025年大阪・関西万博に向けた「Vitality.Swiss プログラム」公式ウェブサイト
https://vitality.swiss/

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