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TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」

[Report]京町家改修を120件以上手掛け、〈郭巨山会所〉で2023年度日本建築学会賞(作品)を受賞した建築家による展覧会

東京・乃木坂にあるTOTOギャラリー・間にて、建築家の魚谷繁礼(うおや しげのり)氏の展覧会「魚谷繁礼展 都市を編む」が5月23日より始まります。6月13日には、「都市の時間を重ねる」をテーマに講演会が内幸町のイイノホールにて行われます(予約制、6月2日に受付を締め切り、応募多数の場合は抽選)。

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景

『TECTURE MAG』では、5月22日に行われたプレス内覧会を取材。会場写真を中心に本展覧会を速報します(後日、魚谷氏によるガイドツアーの詳細を追記予定)。

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景(GALLERY 1)

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

京都のリサーチ(調査協力:京都大学布野修司研究室+京都 CDL / 立命館大学平尾和洋研究室 / 京都建築専門学校魚谷繁礼+池井健ゼミ / 京都工芸織維大学魚谷繁礼研究室 / 魚谷繁礼建築研究所 ※人物名は本稿では割愛)

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

GALLERY 1 会場風景 魚谷繁礼建築研究所では、京都におけるプロジェクトでは毎回、碁盤目状と称される街区を含めて模型を作成している(会場の模型は本展のために新しく制作されたもの)

魚谷繁礼建築研究所による京都でのプロジェクトマップについて解説する魚谷氏
展示は、現在の京都の地図をベースに、西暦794年に建部された平安京と、応仁の乱(1467-77年)前後の上京および下京の市域、さらには1591年に豊臣秀吉によって築かれた土塁「御土居(おどい)」を重ね、竣 エしたプロジェクトと進行中のプロジェクトがブロットされている

魚谷氏は1977年兵庫県生まれ。京都大学および大学院を出てよりずっと京都を拠点とし、京都をはじめとする各都市の街区や構成に関するリサーチを行い、そこで得た知見をベースに設計活動を行なってきました。都市として1200年以上の歴史を有する京都では、都市の文脈の継承について問題意識をもちながら建築の実践に取り組み、京町家の改修を120件以上も手掛けています。

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」

ガムハウス(京都府、2019年)©︎ 笹の倉舎 / 笹倉洋平

 

主催者メッセージ

京都では、日々町家や長屋が取り壊されてマンションや駐車場に替わるなど、歴史的街並みが消滅の危機にあります。その中で魚谷氏は、町家だけでなく路地や地割りなどの、建築遺構を継承する活動を続けています。

例えば〈コンテナ町家〉では、長屋の一角を鉄骨フレームで覆ったうえでコンテナユニットと組合せ、路地を残しつつ現代的な活用ニーズに応えました。2023年度日本建築学会賞(作品)を受賞した〈郭巨山会所(かっきょやまかいしょ)〉では、祇園祭の歴史的会所建築を、保存建築物に関する制度を活用しつつ、既存の木構造と鉄骨造のハイブリッドによる増築で再生させました。

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」

コンテナ町家(京都府、2019年)©︎ 笹の倉舎 / 笹倉洋平

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 コンテナ町屋 1/100模型

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」

郭巨山会所(京都府、2022年)©︎ 笹の倉舎 / 笹倉洋平
2023年度日本建築学会賞(作品)を受賞したプロジェクトの1つ

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 郭巨山会所 1/200街区模型

このように魚谷氏は、現代的な技術を多様な手法で歴史性や地域性に編み込むことによって、街並みや建築を次の100年に継承し、より豊かな都市空間や都市居住の実現を目指しています。魚谷氏の実践は、京都での豊富な実務経験を元に、日本各地や海外にも広がりをみせています。

本展では、こうした魚谷氏の都市と建築に向けた視座を「都市を編む」というタイトルで表現します。「都市を編む」とは、「都市の時間を重ねる」ことと「都市構造を読み解き再編集する」ことの両方の意味を内包しています。展覧会を通して、歴史と未来を繋ぐ現代建築の可能性を感じ取っていただければ幸いです。

TOTOギャラリー・間

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」

京都型住宅モデル(京都府、2007年、池井健建築設計事務所と共同設計)©︎ 杉野 圭

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景

京都型住宅モデル(Kyoto Model: House with 3 Walls) 1/200街区模型
現代の京都に相応しい住宅モデルの提案。街路に面して壁面線が揃うオモテと街区中央で空地が連担するウラという対照的な空間を3枚の壁が繋ぐ。壁はスケルトンとして機能する(展示キャプションより引用)

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

京都型住宅モデルの構造モデル、外壁と内壁を兼ねた構造体に挟まれた内部空間、間仕切り、床を象徴的に表現したもの
「壁は120x450mm 断面の集成材を建て並べて構成される。壁に梁を架け、梁に床を張り、建具によって柔らかく仕切られる。壁は内外の仕上げ、構造、断熱、調湿、準耐火の役割を担う。」(展示キャプションより引用)

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」

もやし町家(京都府、2015年) ©︎ 池井 健

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」

志積プロジェクト(福井県、2020年、川上聡建築設計事務所と共同設計)©︎ 笹の倉舎 / 笹倉洋平


魚谷繁礼(Shigenori Uoya)氏プロフィール

1977年兵庫県生まれ。2001年京都大学工学部卒業、2003年同大学大学院工学研究科修了。現在、魚谷繁礼建築研究所代表。京都大学などで非常勤講師を務める。2020年より京都工芸繊維大学特任教授。京都をはじめとする国内外の歴史都市において街路街区の構造の変容と現況に関する調査研究を行う。これまで手がけた主な仕事に、京都型住宅モデル(京都府、2007年、池井健建築設計事務所と共同設計)、西都教会(京都府、2011年)、ガムハウス(京都府、2019年)、SOWAKA(旧美濃幸)(京都府、2019年)、コンテナ町家(京都府、2019年)、郭巨山会所(京都府、2022年)などがあり、著書として『住み継ぐ家づくり 住宅リノベーション図集』(オーム社、2016年)、本展の図録として刊行された『魚谷繁礼建築集 都市の時間を重ねる』(TOTO出版、2024年)がある。主な受賞に、JIA新人賞(2021年)、北陸建築文化賞(2021年)、関西建築家大賞(2022年)、日本建築学会賞(作品)(2023年)など。

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景

五条I町プロジェクトで解体・本展の中庭会場に再構築された茶屋建築の軸組展示について解説する魚谷氏 Photo: Jun Kato / TEAM TECTURE MAG

 


#TOTOギャラリー・間 YouTubeチャンネル:予告編「魚谷繁礼展 都市を編む」(2024/04/26)

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

茶屋建築の軸組展示は「おそらく一般的に京町屋とか茶屋建築といった名称は知られていても、どのような構造になっているかは見たことがないはず」と考えて展示されたもので、内部に入ることもできる

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

茶屋建築の軸組展示では、これから竹小舞(たけこまい)をたてて土壁をつくられる予定で、会期中に進化させる計画とのこと

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景

会期中、鎮座するお地蔵さんの祠に奉納された御神酒種のラベルは「都市を編む」

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景

中庭の軸組展示の詳細は4F・GALLERY 2の入り口にあり(五条I町プロジェクトについて解説する魚谷氏)

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

手前:高辻猪熊町プロジェクト 構造モデル
「コンクリートは一部、既存土壁を型枠にして打設している(このモデルのコンクリートの一部にも土壁のテクスチャーが転写されている)。」(展示キャプションより引用)

五條I町プロジェクトIII期(2035年完成予定) 1/100街区模型 画面中央・スケルトンで表現されたものが本会場に運び込まれた茶屋建築

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

GALLERY 2 会場風景 本展の照明はシリウス ライティングオフィスとの協働

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

GALLERY 1 新釜座町の町家 1/50模型 魚谷繁礼建築研究所の改修設計によって、奥に長い空間の間あいだで採光がとれていることがわかるスポット照明が、模型の左斜め上の天井からあてられている

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

新釜座町の町家 1/50模型 「オモテからオクを臨むと、暗い屋内、明るい庭、暗い屋内、明るい庭、建物と配置が続き、明暗が繰り返される」(展示キャプションより引用)

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」会場風景 

GALLERY 1の展示:郭巨山会所 構造モデル(原寸模型) 「母屋の既存の木の柱梁による軸組と、新たな木と鉄による軸組を一体化。柱梁は新旧の木と鉄により構成される。軸組に土壁が塗られて鉄骨の真壁造が現れた。」(展示キャプションより引用)

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」

TOTO乃木坂ビル 外観 五条I町プロジェクトで解体された茶屋建築の軸組展示の様子がビルの外からも確認できる

「魚谷繁礼展 都市を編む」

タイトル英語表記:Shigenori Uoya: Re-Weaving Urban Fabrics
会期:2024年5月23日(木)~8月4日(日)
開館時間:11:00-18:00
休館日:月曜・祝日
入場料:無料
会場:TOTOギャラリー・間
所在地:東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F(Google Map
電話番号:03-3402-1010
主催:TOTOギャラリー・間
企画:TOTOギャラリー・間運営委員会(特別顧問:安藤忠雄、委員:貝島桃代、平田晃久、セン・クアン、田根 剛)
後援:一般社団法人東京建築士会、一般社団法人東京都建築士事務所協会、公益社団法人日本建築家協会関東甲信越支部、一般社団法人日本建築学会関東支部

TOTOギャラリー・間「魚谷繁礼展 都市を編む」

関連イベント・魚谷繁礼講演会

テーマ:「都市の時間を重ねる」
日時:2024年6月13日(金)17:30開場、18:30開演、20:00終演(予定)
会場:イイノホール(東京都千代田区内幸町2-1-1飯野ビルディング4F)
定員:500名
参加費:無料
参加方法:TOTOギャラリー・間ウェブサイトから要事前申込
受付期間:2024年4月4日(木)~2024年6月2日(日)
※申込み多数の場合は抽選(結果は主催者より通知予定)
※状況により、上記の予定が変更になる場合あり
※本講演会は未就学児童の入場不可

TOTOギャラリー・間 ウェブサイト
https://jp.toto.com/gallerma



Photographs by Naoko Endo and Jun Kato
texted by Naoko Endo
※後日、魚谷氏によるガイドツアーの詳細を追記予定

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