「THE TOKYO TOILET」プロジェクト 11カ所めとなる公共トイレ
優れたデザイン・クリエイティブの力で、インクルーシブな社会のあり方を広く提案・発信することを試みる、日本財団が中心となって進められている「THE TOKYO TOILET」プロジェクト。
多様性を受け入れる社会の実現を目指し、誰もが快適に利用でき、かつデザイン性の高い公共トイレを渋谷区内17カ所に設置するもので、これまでに建設された10のトイレのうち、7組8つのトイレを本誌編集部では取材、特集記事でお伝えしています。
2021年7月16日に、その11カ所目のトイレが代々木八幡にオープンしました。デザインを、建築家の伊東豊雄氏が手がけています。
伊東豊雄氏が手がける初の公衆トイレ
日本財団が今春、若者に向けて行ったアンケートでは、彼らの多くが公共トイレに対して「暗い」「汚い」「臭い」「怖い」といったマイナスイメージを抱いていることが明らかになっています。今回、デザインを担当した伊東氏も同様でした。
クリエイターの伊東豊雄氏のコメント:
公衆トイレは、男性の僕でもできるだけ利用したくないと考えていました。そこで今回、落ち着いて安心して利用できる、さり気ないデザインに是非トライしてみたいと思い、喜んでお受けしました。
今回設置した代々木八幡公衆トイレは、「夜間でも女性が利用できるような安心感を抱けるトイレ」や「デザインが目立たず、さり気なく利用できるトイレ」になってほしいと思っています。
伊東豊雄氏プロフィール:
1941年生まれ。1965年東京大学工学部建築学科卒業後、菊竹清訓建築設計事務所に勤務。1971年にアーバンロボット設立。1979年伊東豊雄建築設計事務所に改称。主な作品に、〈せんだいメディアテーク〉、〈TOD’S表参道ビル〉、〈多摩美術大学図書館(八王子)〉、〈みんなの森 ぎふメディアコスモス〉、〈台中国家歌劇院〉(台湾)など。
主な受賞に、日本建築学会賞、ヴェネチア・ビエンナーレ金獅子賞、王立英国建築家協会(RIBA)ロイヤルゴールドメダル、朝日賞、高松宮殿下記念世界文化賞、プリツカー建築賞、UIAゴールドメダルなど。
2011年に私塾「伊東建築塾」を設立。これからのまちや建築を考える場としてさまざまな活動を行っている。NPO伊東建築塾
http://itojuku.or.jp/
八幡社に生えた"キノコ"
伊東豊雄氏がデザインした公共トイレの立地は、山手通り沿い、代々木八幡宮参道の階段上り口。コンセプト名は「Three Mushrooms(スリーマッシュルーム)」)。その名の通り、代々木八幡宮の森から生まれた3本のキノコのようなトイレで、背後の森と調和するような佇まいとなっています。
トイレの背面は代々木八幡宮と代々木出世稲荷大明神の境内。上方からトイレを見下ろすと、なるほど、3つの屋根がマッシュルームの笠のような丸みを帯びた形状をしていることがよくわかります。
防犯性を高めた安心トイレ
伊東氏によるデザインは、個室型のトイレを3つに分散させています。これにより、けして広くはない敷地に回遊性を生み出しました。行き止まりがなく、視線が抜けることで、防犯性を高めています。
各個室のスペースを広くとり、従来は多目的トイレに集約していた高齢者や子ども連れのための機能も、男女の個室へと分散することで、パブリックなトイレとして、多様な方が利用しやすいつくりとしています。
トイレプロジェクトは現在進行形
老若男女が抱いている公衆トイレの負のイメージを払拭し、公共物であるトイレを皆が美しく使い続ける、その社会的な土壌を育ていくことを目指している「THE TOKYO TOILET」プロジェクトには、伊東氏のほか、建築家の隈 研吾、槇 文彦、クリエイティブディレクターの佐藤可士和といった第一線で活躍中のクリエイター諸氏が参画。17カ所の設置完了は、2022年3月末を予定しています。(en)
代々木八幡公衆トイレ
コンセプト名:Three Mushrooms(スリーマッシュルーム)
所在地:東京都渋谷区代々木5-1-2(Google Map)
デザイン:伊東豊雄(伊東豊雄建築設計事務所代表取締役)
ピクトサインデザイン:佐藤可士和(SAMURAI)
設計・施工:大和ハウス工業
協力:TOTO株式会社
事業主:日本財団(完成した公共トイレは渋谷区に譲渡)
供用開始:2021年7月16日(金)午後
日本財団「THE TOKYO TOILET」ページ
https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/thetokyotoilet
「THE TOKYO TOILET」特設Webサイト
https://tokyotoilet.jp/