ブルーボトルコーヒーが〈白井屋ホテル〉に!
ブルーボトルコーヒーの新たな店舗が、前橋の〈白井屋ホテル〉の敷地内に9月17日にオープンしました。
〈白井屋ホテル〉は昨年12月の開業。藤本壮介建築設計事務所が建物の設計とリノベーションを手がけ、アートデスティネーションとして、前橋の地域創生を掲げ、多様な分野のクリエイターと共に具現化した「まちのリビング」を目指しているホテルです。
〈ブルーボトルコーヒー 白井屋カフェ〉の立地は、2棟からなる〈白井屋ホテル〉のうち、新築されたグリーンタワーの路面部分。ホテルの北側を東西に流れる馬場川沿いに面しています。
店舗の空間デザインは、芦沢啓治建築設計事務所が担当。みなとみらいカフェ、渋谷カフェに続き、ブルーボトルコーヒーではこれが3店舗目となります。
9月17日(金)10時の開店前、プレス内覧会が開催されました。『TECTURE MAG』編集部ではこれを取材(内外観の速報は公式Twitterに投稿)。現地での芦沢氏の話も交えて、レポートをお届けします。
空間デザインは芦沢啓治建築設計事務所が担当
「今回の店舗は、既存の空間の打ち放しの躯体や梁も見えている天井が荒々しく、まるで洞窟のような空間でした。ブルーボトルコーヒーのカフェで共通している、良い意味で普通のカフェっぽくない、サロンのような空間をどうやって表現するかを考えました」(芦沢啓治氏談)
キーマテリアルはレンガ
店舗の床材は、前橋にとってのキーマテリアルであるレンガを採用。〈白井屋ホテル〉のパサージュや、グリーンタワーのエレベーター、馬場側通りの敷地にも見られる建材で、外部・まちとの連続性をもたせています。
建築家としてのオペレーションの数々
街路のレンガと店舗の床のレンガの間に、エントランスの幅いっぱいに設置されたココマットは、芦沢氏が特にこだわった部分です。
「商業施設やオフィスビルなどで、雨が降ったときに、足拭きマットをエントランスに敷いて急場をしのぐ光景をよく見かけます。何枚もベタベタと敷いたりしてしまうと、いくら空間が良くても台無しになってしまう。雨が上がったら片付けないといけないし、そのまま放置されたりするとなおさらかっこわるい。きちんとおもてなしする大事なエントランスとして、建築家としてオペレーションすべきところだと考えました。さらにこの前橋の白井屋カフェでは、お客さんが店に”帰ってくる”ような、個人のお宅に入るようなおもてなし感も出したかったので、エントランスの幅にあわせてマットをしつらえました」(芦沢氏談)
大きなローベンチが鎮座する店内
フロアの中央には、大きな長丸型(楕円形)のソファーが置かれています。店舗の総面積は78.55m²、決して広くはない店舗なので、かなり思い切ったデザインと配置といえます。
芦沢氏がデザインし、他の店舗でもコラボレーションしているカリモク家具が制作したオリジナルのソファーは、どの方向からもカジュアルに座ることができ、赤ちゃんと一緒であれば、広々とした柔らかな生地のソファの上に安心して寝かせることもできます。〈白井屋ホテル〉が目指している「まちのリビング」のイメージともリンクした造作です。
「1枚の写真を撮ってみたときにどう見えるか」
「心がけているのは、店の写真を1枚撮ってみたときに、それがどこのカフェなのかが一目でわかるようなデザインです。とはいえ、カフェの場合、テーブルと椅子を単純に並べただけでは、ファストフードの店のようになりがちで、店の個性を出すのはとても難しい。その店を印象付けるようなアイコンやキーマテリアルを、その店や地域のストーリーに合わせて設けるようにしています」(芦沢氏談)
統一感と差別化をさりげなく両立
店内で見られる椅子や丸テーブルの天板も、芦沢氏がカリモク家具とのコラボで制作し、みなとみらいや渋谷のカフェでも使用されているものです。多店舗との違いは、丸テーブルの脚部が銅製であること。キーマテリアルであるレンガの床にあわせたカラーリングです。この銅のマテリアルは、ドリップステーション+レジカウンターの上に吊るされた照明のシェードと、ダストボックスの金物などにも見られ、店内での統一感を図っています。
「ちょっとずつバリエーションをつける」
「みなとみらいカフェと渋谷カフェと同じ家具を使っていても、ちょっとずつバリエーションをつけています」と芦沢氏。店舗で販売するコーヒー豆やオリジナルグッズなどを陳列する棚や、ダッシュボックスも、芦沢氏が手がけたほかの2店舗とベースは同じで、設置する空間にあわせてディベロップしています。
大きなガラス扉の把手に巻かれているペーパーコードも、みなとみらいカフェを訪れたことがある人なら「おっ」と気づくポイントかも。同店の太い円柱まわりで見られるデザインです。
関連記事:特別レポート&インタビュー:ブルーボトルコーヒー みなとみらいカフェ / 芦沢啓治(2020年11月掲載)
『TECTURE MAG』
「特別レポート&インタビュー:ブルーボトルコーヒー みなとみらいカフェ / 芦沢啓治」(2020年11月28日掲載)
https://mag.tecture.jp/feature/20201128-bluebottlecoffeeminatomiraicafe/TECTURE YouTube公式チャンネル
「Special report & Interview: BLUE BOTTLE COFFEE MINATOMIRAI CAFE/ ブルーボトルコーヒー みなとみらいカフェ」(2021年11月25日掲載)注.リンククリック直後に音声が出ます
https://www.youtube.com/watch?v=nCLemb7fXJ0
グリーンタワーの芝に映えるブルーボトルのサイン
ブルーボトルのサインは、〈白井屋ホテル〉グリーンタワーの緑の芝をバックに、店舗に対して右上に掲示されています。芦沢氏によれば、ボトルの大きさに規定はないものの、50mmピッチでサンプルを用意して、どの大きさがいちばん適しているか検討を重ねたとのことです。
街ゆく人にもカフェの雰囲気を伝える
既存空間には目立つ位置に柱が立っていたため、ドリップステーションをどこに置いてどちらに向けるか、何パターンか検討したとのこと。でもやはりここだろうと、店舗の奥、ガラス戸越しに外からもよく見える正面の位置に。ブルーボトルコーヒーでは、注文を受けてからバリスタが1杯ずつ丁寧にコーヒーを淹れており、この一連の動作を、街ゆく人の目にも見てもらおうという狙いです。
ホテルと共通するワード「デスティネーション」
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)予防の観点もあり、出入り口は冬季を除いて開けはなつことを前提に、引き違いの大きなガラス戸が設置されました。外からは店内の様子が見え、店内からは、安定した北側の柔らかい光のなか、外の往来を感じられます。壁に掛けられたアート作品を含めてカフェ全体の空間を楽しめるよう設計されています。
まちのリビング、まちのサロンとして
ブルーボトルコーヒーでは、これまでに出店してきた国および都市において、地域や人々とのコミュニティを大切にしながら、街の発展にも貢献できる店づくりを進めてきました。地⽅都市初出店となる⽩井屋カフェでも同様です。
前橋市では、地域の再生・活性化のためのビジョン「めぶく。」を以前より掲げており、〈白井屋ホテル〉の昨年の開業もこれに基づくものでした。
ホテルは前橋のまちのリビングとして、〈ブルーボトルコーヒー ⽩井屋カフェ〉はそのコンセプトに準じたサロンのような、デスティネーションな空間として機能・展開し、訪れる人を迎えます。(en)
〈ブルーボトルコーヒー 白井屋カフェ〉店舗概要
所在地:群馬県前橋市本町2-2-15 白井屋ホテル 敷地内(馬場川通り沿い)
店舗デザイン:芦沢啓治建築設計事務所
営業時間:8:00-19:00
店舗面積:78.55m²
店内席数:店内:16席 屋外ベンチ:2名がけ5台
※政府や自治体の今後の指針や発表、施設の方針などの状況から、営業時間が変更となる場合あり
※開業当初はコロナ対策のため椅子の数を減らして営業
開業日:2021年9月17日(金)
ブルーボトルコーヒー公式ウェブサイト
https://store.bluebottlecoffee.jp/
※〈白井屋ホテル〉では、〈ブルーボトルコーヒー 白井屋カフェ〉の開店を記念して、ホテルラウンジの吹き抜けにあるレアンドロ・エルリッヒの作品が”ブルー仕様”になっている(9月25日までの期間限定)。
白井屋ホテル(SHIROIYA HOTEL)公式ウェブサイト
www.shiroiya.com/