まもなく約半年間という会期を終える大阪・関西万博。TECTURE MAGでは今回、「未来を感じた建築」「好きなパビリオン」「印象に残った若手建築家による共用施設」をテーマにアンケートを実施しました。
600票を超えるリアルな声が集まり、そのうち6割以上が建築設計の仕事に携わる方々、さらに約半数が万博を2回以上訪れているという、熱量の高い方々でした。ご協力いただいた皆様、本当にありがとうございます。
今回はその結果をもとに、”TECTURE MAG読者が選ぶ建築ランキング”を発表します!

TECTURE MAGでは他にも大阪・関西万博のさまざまな関連記事を作成しています。
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「未来を感じた建築」ランキング
“未来社会の実験場”のコンセプトのもと、世界中の建築が集結した大阪・関西万博。
その舞台で来場者が最も強く“未来”を感じた建築とはどんなものだったのか。コメントとともに、ランキング形式で振り返ります。

第1位〈null²〉(ヌルヌル)
プロデューサー:落合陽一(メディアアーティスト)
設計:NOIZ

外観 / ©Yoichi_Ochiai
コメント(抜粋)
“見たことがない、感じたことがない、説明できない建築”
“建物がまるで生きてるように動いている光景を初めて見て未来を感じた”
“内外ともに建築設計だけでは実現しない新しい建築表現。チーム構成(ロボティクス、アーティスト、膜業者、設計者など)が面白く、チームの時代だと感じさせてくれた”
編集部:伸び縮みする特殊な鏡面膜で構成された立方体が内部のロボットアームにより歪む、まさに「変形しながら風景をゆがめる彫刻建築」を体現した建築。動かないことが当たり前な建築が見たことのない動きをすることで、「建物が生きている」と思わせる不思議な体験を生み出していました。
第2位〈大屋根リング〉
設計:藤本壮介+東畑建築事務所+梓設計

Photo: TEAM TECTURE MAG
コメント(抜粋)
“すべてが規格外”
“最大級の木造建築物という点で、後世に伝えていきたい日本の技術のすばらしさを感じた”
“昔は木造が当たり前だったのに、実務を通して最近は「木造=弱い」という認識になってしまっている気がしているが、改めて木造の良さを未来につなぐ存在だったと思う”
編集部:ギネス記録にも認定された世界最大の木造建築。古くから伝わる日本の建築技術により生み出された全周約2kmという土木スケールな建築は、その場で体感することでまさに「規格外」な驚きを与えてくれました。
[大阪・関西万博Reoort]世界最大の木造建築、全周約2kmの大屋根リングからレポートするExpo 2025の見どころ
第3位〈ブルーオーシャン・ドーム〉
設計:坂茂建築設計

photo by Taiki Fukao
コメント(抜粋)
“建築と展示を通して地球の叫びをストレートに感じた”
“建築のサステナブルな未来の可能性と地球環境に関する社会課題をリアルに感じさせられた”
“素材の選定、その後の転用も含めて、未来に負担をかけない建築だと感じた”
編集部:パビリオンを構成するカーボンファイバー、竹、紙管の3種のドームは、杭基礎を必要としないほど軽く、移設を前提とした解体しやすい設計。展示との関係性も素晴らしく、「未来に負担をかけない」という点で私たちに未来を見せてくれました。
第4位〈PASONA NATUREVERSE〉
建築デザイン:板坂 諭(the design labo)
第5位〈日本館〉
総合プロデュース:佐藤オオキ
建築デザイン:日建設計
第6位〈いのちの未来〉
プロデューサー:石黒 浩(大阪大学教授、ATR 石黒浩特別研究所客員所長)
建築・展示空間ディレクター:遠藤治郎(合同会社SOIHOUSE)
第7位〈サウジアラビアパビリオン〉
設計:フォスター アンド パートナーズ
第8位:〈Dialogue Theater –いのちのあかし–〉
プロデューサー:河瀨直美(映画作家)
建築設計:周防貴之(SUO)
第9位〈EXPOホール「シャインハット」〉
設計:伊東豊雄

Photo: TEAM TECTURE MAG
第10位〈ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier〉
設計:永山祐子(永山祐子建築設計)
「好きなパビリオン」ランキング
続いては、「好きなパビリオン」ランキングを発表します。
思想やテーマだけでなく、空間の心地よさやスケール感、素材の表情など、純粋に“好き”と感じたパビリオンはどのような建築なのでしょうか。

第1位〈サウジアラビアパビリオン〉
設計:フォスター アンド パートナーズ

© Nigel Young / Foster + Partners
サウジアラビアの伝統的な村を想起させるボリューム群からなるパビリオン。世界的な建築家集団フォスター アンド パートナーズのプロジェクトということもあり、非常に注目され続けた建築です。
第2位〈日本館〉
総合プロデュース:佐藤オオキ
建築デザイン:日建設計

写真提供:経済産業省
国産スギを用いた560枚のCLTからなる、会期後の転用まで見据えたパビリオン。建築からプロダクト、グラフィックデザインまで手がける佐藤オオキ氏プロデュースだからこそ、建築だけでなく展示の細部にまでこだわりの詰まった空間です。
第3位〈null²〉(ヌルヌル)
プロデューサー:落合陽一(メディアアーティスト)
設計:NOIZ

シアター内観 / ©Yoichi_Ochiai
落合陽一氏と最新のデジタル技術を駆使したプロジェクトを手がけるNOIZにより生み出された、一種の生物のようにすら感じる建築は、その周りには常に人だかりがあるほど注目を集めていました。
第4位〈フランスパビリオン〉
設計:コルデフィ、カルロ・ラッティ・アソシエイツ(Coldefy and CRA-Carlo Ratti Associati)
第5位〈ブルーオーシャン・ドーム〉
設計:坂茂建築設計
第6位〈イタリアパビリオン also hosting the Holy See〉
設計:マリオ・クチネッラ・アーキテクツ(Studio MCA-Mario Cucinella Architects)
第7位〈いのちの未来〉
プロデューサー:石黒 浩(大阪大学教授、ATR 石黒浩特別研究所客員所長)
建築・展示空間ディレクター:遠藤治郎(合同会社SOIHOUSE)
第8位〈UAEパビリオン〉
設計:Earth to Ether Design Collective
第9位〈ウズベキスタンパビリオン〉
コンセプト・デザイン:アトリエ ブルックナー(ATELIER BRÜCKNER)
第10位〈大屋根リング〉
設計:藤本壮介+東畑建築事務所+梓設計
[大阪・関西万博Reoort]世界最大の木造建築、全周約2kmの大屋根リングからレポートするExpo 2025の見どころ
「印象に残った若手建築家による共用施設」ランキング
最後に紹介するのは、「印象に残った若手建築家による共用施設」です。
会場デザインプロデューサーを務める藤本壮介氏の企画により、40歳以下の建築家を対象にした公募型プロポーザルで選ばれた20組が設計を担当し、トイレや休憩所、展示施設など、日常的な用途を担いながらも、それぞれの建築家が自由な発想で空間を提案しました。
会場を彩った「次世代の建築家たち」の作品のなかで、来場者の心に残った作品をランキングで紹介します。

第1位〈休憩所4〉
設計:MIDW+Niimori Jamison

Photo: 大竹央祐
第2位〈休憩所1〉
設計:大西麻貴+百田有希/o+h

Photo: 太田拓実
第3位〈地球の形跡 / Traces of Earth(トイレ2)〉
設計:studio m!kke+Studio on_site+Yurica Design and Architecture

Photo: 大竹央祐
第4位〈Gorge(トイレ4)〉
設計:浜田晶則建築設計事務所 AHA
第5位〈トイレ5〉
設計:米澤隆建築設計事務所
第6位〈One water(トイレ6)〉
設計:KUMA & ELSA
第7位〈トイレ1〉
設計:GROUP
第8位〈サテライトスタジオ 東〉
設計:ナノメートルアーキテクチャー
第9位〈休憩所2〉
設計:工藤浩平建築設計事務所
第10位〈フューチャーライフヴィレッジ〉
設計:KOMPAS
TECTURE MAG読者による、実感に満ちたランキングはいかがでしたか?
まもなく閉幕を迎える大阪・関西万博ですが、「歴代万博の跡地利用まとめ+夢洲構想」特集でも触れたように、会場となった夢洲(ゆめしま)はこれから新たなフェーズへと進化していきます。
そしてTECTURE MAGでは、万博が幕を閉じた今だからこそ見えてくる視点を探るべく、関係者へのインタビュー記事を順次お届けする予定です。
「未来社会の実験場」を経て生まれた建築やアイデアの、その先の展開にもご期待ください。
他にも、TECTURE MAGでは大阪・関西万博のパビリオンにまつわる特集記事を作成しています!
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