大阪・関西万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマのもと、会期終了後の部材のリユースや移築を前提とした「サーキュラー(循環)」を意識した数多くのパビリオンや建築が誕生しました。
会期が終了し、解体フェーズが進む現在、あの名建築や画期的なマテリアルたちはどのような第二の人生を歩んでいるのでしょうか。本万博の開幕から1年経った今だからこそ、本記事では、現時点で決定・実施されているパビリオンおよび建築部材のリユース状況や、次世代へのレガシー継承に関する情報を総まとめしてお届けします。
1. 万博を象徴する建築・シグネチャーパビリオンのゆくえ
万博跡地に継承される〈大屋根リング〉
大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーを務めた藤本壮介氏と、東畑建築事務所、梓設計が共同で設計した〈大屋根リング〉は、北東部分200mの保存が決まっています。そしてその外側付近には、万博を振り返る展示や来館者の交流を行う〈EXPO2025記念館(仮称)〉が新設される予定です。
(2026年2月11日 読売新聞)

Photo: TEAM TECTURE MAG
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落合陽一氏による〈null²〉(ヌルヌル)が横浜に「転生」!
〈null²〉(ヌルヌル)は、TECTURE MAGの読者が選ぶ「未来を感じた建築」ランキング第1位に輝いたパビリオンです。そんな〈null²〉から派生した、新たな2プロジェクトが発表されています。
(サステナブルパビリオン2025 2026年4月7日 プレスリリース)
プロジェクト第1弾は、横浜・みなとみらいの横浜ランドマークタワー内に、常設シアター「null²ⁿ(ヌルヌルネクサス)」を今年オープンするというもの。
続く第2弾は、2027年3月に横浜市内で開催される`「2027年国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」において、新作〈null⁴(テトラヌル)〉が公開される予定です。

外観 / ©Yoichi_Ochiai
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〈いのちめぐる冒険〉の海水コンクリートパネルが各地へ転用
河森正治氏がプロデュース、小野寺匠吾氏がデザインを担当した〈いのちめぐる冒険〉は、真水を使用する従来コンクリートではなく、海水を使用して作成したコンクリートパネルがその大きな特徴の1つとなっています。
その57個のモジュールユニットのうち、15個を沖縄県中頭郡中城(なかぐすく)村における村立中学校の整備計画(PFI事業)に転用されることが決定しています。
また、デジタル・トランスフォーメーションを支援するスパイスファクトリー株式会社の関西拠点では、このコンクリートパネルを新オフィスの内装として再構成する予定となっています。
(2026年2月13日 スパイスファクトリー株式会社 プレスリリース)

photo: Ichiro Mishima
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廃校を再構築した〈Dialogue Theater – いのちのあかし – 〉をさらに継承!
河瀨直美氏がプロデューサーを務め、建築設計を周防貴之氏(SUO)、植栽・環境デザインを齊藤太一氏(DAISHIZEN)が担当した〈Dialogue Theater – いのちのあかし – 〉。
奈良県十津川村と京都府福知山市の廃校となった2つの木造校舎を移築・再構築した本作は、大阪府泉佐野市への移設が決定しており、令和10年度から常設シアターとして活用される予定となっています。
(2026年2月17日 産経新聞)

エントランス棟(左)、対話シアター棟(中央奥)、森の集会所(写真右)、手前が記憶の庭 ©Naomi Kawase / SUO, All Rights Reserved.
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3つの万博をまたにかける〈ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier〉
〈ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier〉は、永山祐子氏が設計した「組子ファサード」に包まれたパビリオンであり、ドバイ万博に同じく永山祐子氏が設計した〈日本館〉のファサードを再利用して構築されました。
そしてこの組子ファサードは、2027年国際園芸博覧会(GREEN × EXPO 2027)の「屋内出展施設(仮)」のファサードとして再利用されることが決定しました。このプロジェクトが実現すると、ドバイ万博から大阪・関西万博に続く2度目のリユースとなります。
(2025年5月22日 有限会社永山祐子建築設計 公式サイト)

Victor Picon ©Cartier
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2. 日本国内へと受け継がれゆく海外パビリオン
部材の80%以上の再利用を達成した〈ルクセンブルクパビリオン〉
〈ルクセンブルクパビリオン〉は、STDM architects urbanistsとみかんぐみにより、解体後の再利用を前提とした「サーキュラー・バイ・デザイン」コンセプトに基づいて設計されたパビリオンです。
このコンセプトの通り、すでに以下のようにさまざまな再利用が進んでいます。
- パビリオン部材の80%以上の再利用を達成
(2026年4月13日 Luxembourg @ Expo 2025 Osaka プレスリリース) - ネスタリゾート神戸にて基礎コンクリートブロックをリユース
(2026年4月28日 株式会社船場 プレスリリース) - 屋根膜素材を再利用したアップサイクルバッグが予約1,800本超を達成
(2026年2月5日 株式会社モンドデザイン プレスリリース) - パビリオンで使用された木材を再利用し、3Dプリンターで椅子を制作
(2026年1月9日 大日本印刷(DNP) プレスリリース)

@Expo 2025 Osaka – Ondrej Piry
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球体建築〈スイスパビリオン〉の一部が兵庫に移設
〈スイスパビリオン〉は、マヌエル・ヘルツ建築事務所が設計した、膜に覆われたいくつもの球体が形成されたパビリオンです。世界最軽量級の膜構造による球体建築であり、そのうちの1つの球体が、ケンミン食品株式会社の篠山工場敷地内に設置されました。
常時一般公開はされていませんが、完全予約制の工場見学や各種イベントを通じて見ることができます。
(2026年4月17日 ケンミン食品株式会社 プレスリリース)

Photo: TEAM TECTURE MAG
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〈ポルトガルパビリオン〉を構成するリサイクル漁網ロープを展示
領域の97%が海で囲まれているポルトガルを象徴する、約1万本のロープが波のように揺れるファサードに包まれた、隈研吾建築都市設計事務所による〈ポルトガルパビリオン〉。
御堂筋路面に位置する株式会社ES&Companyの「TOWERZギャラリー」にて、パビリオンのファサードを構成していたリサイクル漁網ロープが展示されています。
(2026年3月3日 株式会社ES&Company プレスリリース)

Photo: TEAM TECTURE MAG
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〈オランダパビリオン〉が兵庫県・淡路島に移設予定
RAU Architectsが設計した〈オランダパビリオン〉は、使用されたすべての材料は再利用を容易にするため、循環型建築とインフラのためのデジタル・マテリアル・パスポート「Madaster」に登録されている循環型パビリオンです。
パソナグループはAND BVとともに、〈オランダパビリオン〉を兵庫県・淡路島に移設予定であることを発表しました。使用用途は、今後の協議により決定されていく予定です。
(2025年5月20日 株式会社パソナグループ プレスリリース)
A New Dawn (AND) BV:〈オランダパビリオン〉の設計・建設を担当したコンソーシアム。オランダの建築事務所『RAU』、体験型デザインスタジオ『Tellart』、エンジニアリング・コンサルタント会社『DGMR』、大阪の総合建設会社『株式会社淺沼組』で構成

© Zhu Yumen
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鳥取県とのつながりを強調する〈UAEパビリオン〉のパーゴラ
Earth to Ether Design Collectiveが設計〈UAEパビリオン〉は、ナツメヤシの葉軸を使った高さ16mの柱が90本も並ぶ空間が特徴的なパビリオンであり、UAEと日本の協働による異文化が融合したデザインとなっています。
パビリオンの一角に設置されていたパーゴラの材料として、鳥取県智頭町産の智頭杉を利用したつながりから、このパーゴラは鳥取県へと寄贈され、鳥取砂丘こどもの国に設置されました。
(2026年3月31日 鳥取県 プレスリリース)

Photo: TEAM TECTURE MAG
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3. マテリアルの幅広い可能性を示す国内・企業パビリオンと休憩所等
国産CLTを国内で再循環する〈ポップアップステージ(東内)〉、〈日本館〉
大東建託株式会社は、屋外イベントステージ〈ポップアップステージ(東内)〉に使用した国産CLTを、建築資材や現場資材として再利用することを決定しました。
また、〈日本館〉で使用されているCLTパネルに関しても、大東建託は「CLT再利用パートナー」に選出されています。〈日本館〉のCLTパネルは、加工を最小限に抑えた設計により、解体・再利用が容易な構造であるため、企業や自治体等での再利用が予定されています。
(大東建託 2025年11月13日 プレスリリース)
同じく〈日本館〉の「CLT再利用パートナー」である積水ハウス株式会社は、CLTの一度きりの再利用ではなく、建築物等の複数回の解体・再利用を繰り返し、旅をするように全国を巡ることを目指す「旅するCLT」を発表しました。
(2025年12月18日 積水ハウス株式会社 プレスリリース)

写真提供:経済産業省
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建築物の99%以上をリユース・リサイクルした〈パナソニックグループパビリオン 「ノモの国」〉
永山祐子建築設計と大林組による〈パナソニックグループパビリオン 「ノモの国」〉は、主要部材に使用済みの「家電」や工場で生まれる「端材」、社会課題になっている「廃材」をリサイクル・アップサイクルして使用した資源循環型パビリオンです。
企画段階から資源循環型のパビリオンを目指して設計・施工がなされており、パビリオン建築物において99%以上のリユース・リサイクル率および廃棄率1%未満を実現しています。また、建築物だけでなく展示物等のリユース先も決定されました。(2025年12月22日 パナソニックグループ プレスリリース)

Photo: OMOTE Nobutada
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新素材の価値を実証した〈ガスパビリオン おばけワンダーランド〉
日建設計が手がけた〈ガスパビリオン おばけワンダーランド〉は、高い日射反射性能と放射冷却性能を有する新規放射冷却膜材「SPACECOOL」の実証実験を兼ねて外装に実装した建築です。
SPACECOOL株式会社はこの実証・検証により、従来の膜素材と比較して空調エネルギーを最大で約40%削減できる可能性を示した、という検証結果を公開しました。
(SPACECOOL株式会社 2026年3月5日 プレスリリース)
また、大阪・関西万博では同素材を生地に採用したSPACECOOLテントとSPACECOOL日傘が来場者や運営スタッフの熱中症対策として協賛提供されており、閉幕後、奈良女子大学附属小学校と奈良女子大学に寄贈されました。
(SPACECOOL株式会社 2025年10月29日 プレスリリース)

Photo: Yohei Sasakura
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「困った木」が団地と万博の記憶を受け継ぐ〈サテライトスタジオ 東〉
ナノメートルアーキテクチャーが設計した〈サテライトスタジオ 東〉は、日本全国から収集した、さまざまな都合で不要となった「困った木」で構築された、テレビ局の放送スタジオを内包した木造平屋です。
UR都市機構西日本支社は、泉北竹城台一丁団地の団地再生事業で伐採したソメイヨシノなどの樹木を寄付しており、閉幕後、この樹木は元の団地内に設置されました。
万博での役割を果たしたこの樹木が地域に戻ることで、団地に関わる人々の思い出とともに、万博で生まれたつながりや想いを地域の中で共有し、未来へ引き継いでいくことを目的としています。
(2026年3月18日 UR都市機構 プレスリリース)

Photo: ToLoLo studio
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万博からまちの日常へと受け継ぐ〈休憩所2〉のベンチ
工藤浩平建築設計事務所が設計した〈休憩所2〉は、自然石が編むパーゴラによる半屋外空間が特徴的な建築です。
ここで使用されていた、岡山を代表する石材「万成石(まんなりいし)」のベンチが、白十字 山陽店に設置されました。
(2026年2月19日 株式会社白十字 プレスリリース)

Photo: 楠瀬友将
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万博で培われた「想い」を継承する「想うベンチ – いのちの循環」
大阪産の木材を使ったベンチ製作と、地域の人々と一緒に取り組んだウェブメディアでの情報発信等を通じ、「いのちの循環」に想いを馳せるきっかけづくりを目指した「想うベンチ – いのちの循環」プロジェクト。
万博会場に設置されたこれらのベンチは会期終了後、大阪などの地域の小学校等に移設がほぼ完了しており、森やいのちに馳せた想いが各地域で引き継がれています。
(2026年3月31日 なりわいカンパニー株式会社 プレスリリース)

4. 万博全体で進めるリユースとレガシーの継承
大阪・関西万博の様子を「体験」として後世に残すための「デジタルアーカイブ」を制作
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会の公式ウェブサイト内にて公開中の特設サイト「いつでもどこでも 大阪・関西万博 “360° View”https://www.expo2025.or.jp/vr_expo/」では、会期終了後には解体されてしまう万博会場の熱気や建築美を、時空を超えて体験できる「リアリスティック・デジタル・アーカイブ」として提供しています。
(2026年4月14日 株式会社360Channel プレスリリース)

大阪・関西万博におけるリユースマッチング事業
三井住友ファイナンス&リース株式会社とSMFLみらいパートナーズ株式会社は、持分法適用関連会社である株式会社SMARTが、万博協会から、大阪・関西万博で利用した建材・設備機器などのリユースマッチング事業におけるリユース解体業務を受注したことを発表しました。
万博協会は、大阪・関西万博のパビリオンなどで利用された、建材・設備機器のリユースを目的に、マッチングサイト「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」を運営しています。ミャク市を通じて、大阪・関西万博で不要になった物品を売買することで、資源の有効活用と廃棄物の削減を目指しています。
(2025年11月10日 三井住友ファイナンス&リース株式会社 プレスリリース)
大阪・関西万博からGREEN×EXPO 2027へ、レガシー継承する“樹木輸送”プロジェクト「緑配便®」
GREEN×EXPO協会(公益社団法人2027年国際園芸博覧会協会)は、共創パートナー(代表構成員:住友林業株式会社、構成員:日本貨物鉄道株式会社、日本通運株式会社)と連携し、2026年3月4日(水)~6日(金)に「GREEN×EXPO 2027の樹木輸送プロジェクト」を実施しました。
このプロジェクトでは、大阪・関西万博からGREEN×EXPO 2027へのレガシーの継承や、GREEN×EXPO 2027の理念「環境と共に生きる持続可能な社会のあり方」の発信の一環として、幹線輸送をトラックから鉄道や船舶へモーダルシフトすることで脱炭素化をめざす樹木配送サービス「緑配便®」により、大阪・関西万博の会場内の樹木をGREEN×EXPO 2027の会場に向けて鉄道輸送しました。
(住友林業株式会社 2026年3月9日 プレスリリース)

大阪・関西万博の熱源設備を大規模郵便局に再利用
日本郵便株式会社は、大阪・関西万博会場全体の熱供給に使用していた大規模な熱源設備をリユースし、国内最大の郵便・物流ネットワーク拠点である新東京郵便局および新大阪郵便局で活用することを発表しました。
(日本郵便 2026年3月10日 プレスリリース)
さまざまなパビリオンの一部を受け継ぐ〈関西国際空港〉
関西における海外との玄関口〈関西国際空港〉には、さまざまなパビリオンのさまざまな要素を受け継いだ場所が設置されています。
- 論語の一節が書かれた〈中国パビリオン〉の外壁パネルを設置
(2026年4月28日 関西エアポート株式会社 プレスリリース) - 〈カナダパビリオン〉で展示されていた、カナダのさまざまな史跡や公園に設置されている赤い椅子「ムスコカチェア」と環境配慮型の木製タイル「ティンバー・タイル」を〈関西国際空港〉に設置
(2026年4月13日 関西エアポート株式会社 プレスリリース) - 英国で実際に使用されており、〈英国パビリオン〉ではアイビーなどの植物で装飾された赤い電話ボックスを設置
(関西エアポート株式会社 2026年3月27日 プレスリリース)

〈中国パビリオン〉外観

〈カナダパビリオン〉の「ムスコカチェア」と「ティンバー・タイル」

〈英国パビリオン〉と赤い電話ボックス
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いかがでしたでしょうか。建築が「建てて終わり」ではなく、解体され、分散し、新たな場所で新たな役割を担う。大阪・関西万博は、まさにその壮大な社会実験の場であったと言えます。
本記事の内容は、現時点(2026年5月5日)で発表されている情報をまとめたものです。TECTURE MAGでは、今後も続々と発表される万博建築のリユース・レガシー情報を引き続き追っていきます。