2022年9月21日初掲、10月10日「カプセルユニット改修後の内観」画像を追加、2023年2月4日「同・内観」動画をシェア
メタボリズムの名作〈中銀カプセルタワービル〉の解体が9月末に終了する。撤去した23個のカプセルのうち、譲渡先未定の約半数の活用先を、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトが募集している。黒川紀章建築都市設計事務所監修による内外装を竣工時に近づけた修復と、外装のみ修復して引き渡す、2パターンでの譲渡を想定している。
建築家の黒川紀章(1934-2007)が設計し、老朽化のため今年解体となった〈中銀カプセルタワービル〉。2022年春に解体に着手し、9月末に完了する見込みです。
これまでに、部屋数とイコールである全140カプセルのうち、23カプセルが取り外され、都外の保管先に搬出されています。千葉県の再生工場にて、黒川紀章建築都市設計事務所(代表取締役 下條哲成)監修の下、三越伊勢丹プロパティ・デザイン(IMPD / 代表取締役社長 手塚鉄治)[*1]が担当して修復が行われます。
このカプセルの”救出”は、建物の解体決定以前に立ち上げられ、黒川紀章が設計時に設定していたメタボリズムの建築思想の実現を目指していた、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト(代表 前田達之)[*2]が、建物所有者との間で行った交渉によるものです。
カプセルの再生にあたり、搬出予定のカプセルの内装をつぶさに写しとり、パーツを保存。解体工事着工前の2022年4月に、それらを倉庫に保管しました。専門業者がカプセル内のアスベストを除去し、スケルトンの状態で、再生工場まで運搬されています。
同プロジェクトによれば、カプセルの劣化具合は想像以上に進んでおり、先行して運ばれた順に、カプセルの外装を補修し、取り外した内装パーツを取り付けていくとのこと。新品のカプセルをイチからつくった場合に比べ、時間と費用のかかる作業となっているとのこと。
再生されたカプセルのうち、半数以上は譲渡先が決定。未定のカプセルについて、美術館での展示や、宿泊施設、商業施設で活用するなど、入手を希望するパートナー企業、団体を募集しています。
〈中銀カプセルタワービル〉のカプセルの再生は、大きく2つの用途を想定し、準備されています。
1つは美術館などでの展示。黒川紀章建築都市設計事務所監修のもと、解体前に取り外した棚や照明、オーディオ、ユニットバスなどの内装を組み込み、50年前の竣工当時のカプセルを再びつくり上げます。
解体時にはそのほとんどが破損しており、希少だった丸窓のブラインドや、マットレスの形状が特徴的なベッドなども再現する予定で、1972年竣工当時の〈中銀カプセルタワービル〉を体感することができます。
もう1つの活用方法は、宿泊施設や商業施設への転用です。
この場合は、カプセルの外装のみを竣工当時の状況に再生し、内装はパートナー企業、団体で自由にカスタマイズすることができます。
解体前の〈中銀カプセルタワービル〉では、居住・利用者によるリノベーションが進み、自由なアイデアで再生されたカプセルが多く存在しました。例えば、和室やアンティーク仕様など。残された丸窓を除いて、オリジナルの内装を想起できないほどの変化を遂げたカプセルも。
黒川紀章の代表作の新たな再生方法として、現代にふさわしいメタボリズム(新陳代謝の意)の可能性を拡げる譲渡先を求めています。メッセージ:
「カプセル譲渡についての問い合わせは数多く寄せられています。なかでも、海外の著名美術館から、展示用カプセルへの問い合わせが多く、アメリカ、ヨーロッパ、アジアと、バランスよく配置したいと考えています。
そのほか、新たな活用方法について、宿泊施設、商業施設、店舗、学校、デザイン会社などから問い合わせがあります。
2022年12月より、完成したものから順に出庫する予定ですが、まだ若干、数に余裕があります。中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトの活動趣旨に賛同いただける方は、プロジェクト運営者か、黒川紀章建築都市設計事務所まで、使用目的を含めてお知らせください。
カプセルそのものは無償で譲渡しますが、再生にかかる修繕費用の一部と、新たな設置場所までの運搬費用は、譲渡先の負担となります。*1.三越伊勢丹プロパティ・デザイン
日本有数のホテルやラグジュアリーブランドの内装を手掛け、100年以上の歴史がある。諸官庁の家具などを製作している自社木工家具工場・三越製作所を有する三越伊勢丹グループ会社。
https://www.impd.co.jp/index.html*2.中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト
保存を望むオーナーと住人を中心に2014年に結成。2015年11月に書籍『中銀カプセルタワービル 銀座の白い箱舟』(青月社)、2020年12月に『中銀カプセルスタイル:20人の物語で見る誰も知らないカプセルタワー』(草思社)、2022年3月に『中銀カプセルタワービル 最後の記録』(草思社)を出版。
管理組合と協力体制を構築することで、見学会の開催や、取材、撮影の補助、コミュニティーの形成にも力を注ぎながら活動。「中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト」公式ウェブサイト
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