徳島県上勝町に、環境型複合施設〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)〉と、ゼロ・ウェイストアクションホテル〈HOTEL WHY〉が開業しました。
当初は今春を予定していましたが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大の影響を受けて、「ゴミの日」である5月30日にあわせての開業となりました(株式会社トランジットジェネラルオフィス 2020年5月29日プレスリリースより)。
施設のブランディング、クリエイティブプロダクション、エクスペリエンスデザインは、トランジットジェネラルオフィスが担当。建築設計はNAP建築設計事務所を率いる中村拓志氏によるものです。
上勝町は、徳島市内から車で約1時間。町の大部分を山地に覆われ、急斜面には棚田や段々畑の風景が広がっています。
人口約1,500人のこの町では、2003年に日本の自治体として初めての「ゼロ・ウェイスト宣言」を行いました。ウェイスト(Waste)とは、無駄や浪費を意味するワードであり、この宣言は、上勝町のごみをゼロにする=ごみをどう処理するかではなく、ごみ自体を出さない社会を目指すものです。
上勝町では、ごみ収集を行わず、生ごみなどはコンポストを利用し、各家庭で堆肥として利用。瓶や缶などの「資源」を住民各自がゴミステーションに持ち寄り、45種類以上に分別しています。「ゼロ・ウェイスト宣言」から17年経過した現在、リサイクル率は80%を超えています。
「ゼロ・ウェイスト」を継続している上勝町には、国内外から見学者が訪れています。そこで、住民に配慮した環境を整備するとともに、より多くの人々に町での取り組みを知ってもらい、体験もできる、環境型複合施設としての機能を充実させた施設が、〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)〉です。リサイクルごみ集積場の「ごみステーション」、「くるくるショップ」、「ゼロ・ウェイストアクションホテル」、「セミナールーム」、「ラボ」から成る、環境型複合施設です。
中村拓志氏が設計したこちらの施設は、上勝町の「ゼロ・ウェイスト宣言」の理念を体現するため、町で伐採された杉材や、不要になった建具や家具などを活用するなど、大量消費・大量生産社会と一線を画した建築となっています。
ホテルでは、宿泊中に出るごみを分別し、その行き先がわかるウェイスト・セパレーションを採用。客室で使用する石鹸も、宿泊者が使うサイズで切り分け、サービスコーヒーの豆も量り分けるなど、従来の宿泊施設にではあまりみられないの運営システムも特色です。
同センターおよび〈HOTEL WHY〉の設計コンセプトは、中村拓志が同施設の公式ウェブサイトに寄稿したテキストで確認できます。
飲食メニューをはじめ、ホテルで提供されるサービスには、「ゼロ・ウェイストに賛同する複数のブランドが参加しています。
朝食は、上勝のブリュワリー「RISE & WIN Brewing Co BBQ & General Store」監修による、上勝や徳島の大地の恵みを取り入れた、ピクニックスタイル・ブレックファースト。オリジナルウェルカムドリンクは、日本初のコールドプレスジュース専門店「SUNSHINE JUICE」。コーヒーは、サステナビリティを提案する「TADE GG 農園」の豆をローストする「Little Darilng Coffee Roasters」。バスルームのアメニティーには、ニュージランド発の「ecostore」と、手づくり一筋65年の「無添加石鹸本舗」の商品を使用しています。
このようなさまざまなゼロ・ウェイストアクション体験に加えて、トレッキング、フィッシング、レイクカヤック、サバイバルゲームなど、同地の自然の恵みを取り込んだフィールドアクティビティープログラムも用意しているとのことです。
今後は、環境教育のデスティネーションとしても活用されます。(en)
ブランディング・クリエイティブプロダクション・エクスペリエンスデザイン:トランジットジェネラルオフィス
建築設計:中村拓志 & NAP建築設計事務所
ファニチャーデザイン:Wrap建築設計事務所
コミュニケーションライブラリー監修:BACH
事業スキームアドバイザー:トーンアンドマター
地域コーディネーター:一般社団法人地職住推進機構
運営主体:BIG EYE COMPANY
〈上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)〉公式ウェブサイト
https://why-kamikatsu.jp