2023年4月21日初掲、2024年1月28日竣工画像とコンセプトテキスト追記
アイウエアブランド・ジンズ(JINS)の新たなロードサイド店舗〈JINS佐久平店〉が、長野県佐久市に4月22日にオープン。ジンズは長野県内では9店舗目となる出店です。
店舗の設計を、建築家・中村竜治氏が率いる中村竜治建築設計事務所が担当。なお、中村氏は長野県の出身です。
〈JINS佐久平店〉は、36角形をしており、平面で見るとほぼ円形。外周面には18個の窓を均等に設け、全方位に窓が開かれたデザインとなっています。
建物の表と裏という概念を無くし、どの方角にも開かれた建物とすることで、店舗敷地に隣接する公園や、その背後に広がる佐久平のまち、さらには佐久盆地を囲む美しい山々の風景を最大限に取り入れ、店内からも眺めることができるようになっています。
どの方角に対しても開かれた、まるで大きな木の幹のようなこの空間が、公園の東屋(あずまや)にして人々が集い、誰でも気軽に立ち寄れる店舗となることを目指したとのこと。
店舗面積は59.68坪で、ジンズの約1,200本のアイテムを展開しています。
店内の商品棚やカウンターなどの什器には、長野県産の木材・唐松(カラマツ)を採用。木材の地産地消に貢献しています。
〈JINS佐久平店〉の立地は、JR佐久平駅の南側に位置し、「地域の人と人、公共施設と商業施設、地域住民や来訪者、老若男女を問わず多くの人とものを結ぶ場」として佐久市が整備し、今春完成した「佐久平サンスクエア」(旧佐久平南広場)に隣接しています。同店は積極的にこの広場を活用しながら、地域共生の取り組みを行っていく予定とのことです(ジンズ プレスリリースより)。
盆地に立つ眼鏡店
長野県東部の高い山々に囲まれた佐久平という盆地に建つ眼鏡屋さんです。高い建物も少ないため美しい山々が見渡せます。東側にレストラン、西側に道路、南側にホームセンターの駐車場、北側に公園があります。
特徴的なのは、それらとの境界に障害はなく行き来が可能で、どの方向からも人がやって来て、通り抜けする人さえ出てくるということです。これらの特徴はすぐに公園にぽつんと立つ大きな樹や東屋のような表裏のない全方位的な建物を思い起こさせ、そのような在り方はお店という用途にも合っていると思いました。
全方位的であることや寒冷地であることを考慮し、平面を円形に近い形(正確には少し潰れた36角形)にし、同形の窓を均等に配置しました。内部ではバックヤードを入子状にし、お客さんが窓際を一周できるようにしました。外部においては周囲を自由に歩き周ることができ、内部においては行き止まりがなく周囲の風景を360°眺めることができます。
人がさまざまな方向からやって来て、過ごし、通り抜けていく、そんな樹や東屋のようなお店になればと思っています。
中村竜治(なかむら りゅうじ)プロフィール
建築家。1972年長野県生まれ。東京藝術大学大学院修了後、青木淳建築計画事務所を経て、2004年中村竜治建築設計事務所を設立。
主な設計・デザインに、〈へちま〉(ヒューストン美術館、サンフランシスコ近代美術館収蔵)、〈JINS京都寺町通店〉、〈神戸市役所1号館1階市民ロビー〉、〈資生堂Beauty Square〉ほか、多数。
主な展覧会出展に、「建築はどこにあるの? 7つのインスタレーション」東京国立近代美術館、「反重力」豊田市美術館、「第八次椿会 この新しい世界」資生堂ギャラリーなどがある。
主な受賞に、第6回京都建築賞優秀賞、第32回JIA新人賞など。単著として『コントロールされた線とされない線』(LIXIL出版、2013年)がある。中村竜治建築設計事務所 ウェブサイト
https://www.ryujinakamura.com/
敷地面積:481.60m²
延床面積:197.30m²
構造:木造
階数:平屋
設計・監理:中村竜治建築設計事務所(中村竜治、若木麻希子)
構造設計:円酒構造設計(円酒 昂、上田彩希)
設備設計:コモド設備計画(松井知行)
施工:竹花組(矢野政美、木内祐孝、真瀬垣茂)、スペース(余佳)
所在地:長野県佐久市岩村田字上樋橋1496-1(Google Map)
営業時間:10:00-20:00
オープン日:2023年4月22日(土)