公益財団法人日本デザイン振興会(会長:内藤 廣)は、10月5日に発表していた今年の大賞候補(ファイナリスト)5組の中から、千葉県八千代市にある老人デイサービスセンター〈52間の縁側〉を大賞(内閣総理大臣賞)に選出したと発表しました。事業主である有限会社オールフォアワン(代表 石井英寿)と建物を設計した山﨑健太郎デザインワークショップの共同受賞となります。
本年度グッドデザイン賞受賞作1,548点の中から選出されたもので、10月25日に開かれたグッドデザイン大賞選出会において、大賞候補者5組による公開プレゼンテーションを経て、審査委員、グッドデザイン賞受賞者、一般からの投票をあわせた結果、以下の得票数となりました[注]。
・52間の縁側:3,996票
・神山まるごと高専:3,230票
・NHKシチズンラボ:1,801票
・プリウス:1,701票
・Panasonic ラムダッシュパームインES-PV6A:1,479票
地域の人たちが気軽に立ち寄れる、縁側のような老人デイサービス。高齢者や子供、地域住民の誰にとっても居場所となり、困ったときに助け合える福祉の地域拠点である。
受賞企業:オールフォアワン、山﨑健太郎デザインワークショップ
事業主:オールフォアワン
設計:山﨑健太郎デザインワークショップ
構造設計:多田脩二構造設計事務所
ランドスケープデザイン:稲田ランドスケープデザイン事務所
照明計画:ぼんぼり光環境計画
撮影:黒住直臣
構造:木造
階数:地下1階+地上1階
評価のポイント
「デイサービスという型にはまらない、地域でお互いに助け合える場がここでは実現されている。制度としてはデイサービスの施設として運営されているようだが、赤ちゃんからお年寄りまで誰でもウェルカムという状況が何より素晴らしい。おそらく地域社会に賛同してくれるサポーターがいて、助け合える体制ができているのであろう。お年寄りもいつもサポートされるだけでなく、子供を見守ったり、子供も大人の手伝いをしたりと、昔は当たり前にあったであろう風景が日常的に展開していることが感じられる。長い縁側と広い屋根下空間がそのコンセプトを見事に体現させ、実際の状況を誘発させている。 建築を作っている時から庭づくりのワークショップなどを行い、信頼される場づくりに努めてきたようだ。その着実なアプローチも含めて高く評価できる。」(担当の審査委員:手塚由比、秋吉浩気、中川エリカ、藤原徹平、Chiyi Chang)
グッドデザイン大賞 受賞者コメント
「さまざまな面で効率化や利便性が求めらている時代の中で、高齢者が人として尊厳を持って生きられるための場が必要と考えてこの施設を作りました。高齢者が幸せを感じられるのは、子どもたちやさまざまな世代の人との触れ合いがある日常ではないでしょうか。いまの社会から失われつつある、昔の暮らしに当たり前にみられた光景をこの場を通じて取り戻すことで、高齢者だけでなく誰もが幸せに生きられる社会を目指したいです。」(石井英寿)
デザイナープロフィール
山﨑健太郎(やまざき けんたろう)
1976年千葉県生まれ。2002年工学院大学大学院修士課程修了。入江三宅設計事務所を経て、2008年山﨑健太郎デザインワークショップ設立。
現在、工学院大学・東京理科大学・早稲田大学 非常勤講師、法政大学 兼任講師。2020年よりグッドデザイン賞審査委員を務める
受賞作品〈52間の縁側〉詳細
https://www.g-mark.org/gallery/winners/20423
[注] グッドデザイン大賞の選出方法
グッドデザイン賞審査委員とグッドデザイン賞受賞者、および一般投票によって1点を選出する。一般投票は、グッドデザイン賞公式ウェブサイトから10月5日から10月24日までの期間と、「私の選んだ一品2023」展会場で10月5日から10月22日までの期間でそれぞれ受け付けた。投票の集計にあたり、一般:受賞者:審査委員=1:5:100として換算している。