東京・渋谷区内にある公共トイレを舞台に、写真家の森山大道氏の写真作品が展示されています。展示予定期間は7月19日から9月23日まで。
供用開始時に『TECTURE MAG』にてその多くをレポートした「THE TOKYO TOILET」(以下、TTTプロジェクトと略)[*詳細は後述]で誕生した17の公共トイレのうち、11カ所を舞台に開催されるもので、渋谷区主催のアートプロジェクトの一環です。
展示される写真作品は、THE TOKYO TOILETを対象に森山氏が撮影し、雑誌『SWITCH』にて約3年にわたり連載された「Scene THE TOKYO TOILET」にて発表されたもの(その後、写真集『THE TOKYO TOILET』として2023年11月に刊行されている / 詳細はこちら)。
これらの写真作品は、2022年に「ミラノデザインウィーク」開催期間中に市内にて「THE TOKYO TOILET / MILANO」と題して展示されたほか、2023年には国際的な写真フェア「パリ・フォト」でも「THE TOKYO TOILET / PARIS」として展開。これに続く第三弾が今回の「THE TOKYO TOILET / SHIBUYA」となります。

Photo by Daido Moriyama
森山大道氏 プロフィール
1938年(昭和13年)大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年(昭和39年)に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年(昭和42年)「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。2012年(平成24年)、ニューヨークの国際写真センター(ICP)が主催する第28回インフィニティ賞生涯功績部門を受賞。2016年、パリ・カルティエ現代美術財団にて2度目の個展「DAIDO TOKYO」展を開催。2018年(平成30年)、フランス政府より芸術文化勲章「シュヴァリエ」が授与された。2019年(平成31年)、ハッセルブラッド財団国際写真賞受賞。
森山氏コメント
「用を足すという、生理現象を処理するための場所だった公共トイレは、いわば都会に潜むものとしてあった。しかし、このプロジェクトのそれぞれのトイレは、実に明るい印象を与えている。一種の憩いの場として陽が当たっている。トイレの存在そのものを変えたとさえ思う。街の片隅にひっそりと潜む場所であった公園も、存在そのものが明るみを持って中心になっている。日常の中で一瞬、誰にとっても安心できる場所になったということが、THE TOKYO TOILET(TTT)の最大の成果だと思っている。
渋谷区でぼくが撮ったTTTの写真が、それらの公共トイレそのものに展開されることは、いわば街で撮ったものを街に返す、ということだ。作者の手を離れ、形を変えて外側へと広がっていくにしたがって、人の記憶の中で姿を変えていく。どんどんアノニマスなものになっていく。それが写真の一番の力だというのが、ぼくの思いである。」
日本国内では今回の渋谷が初開催となる本展では、各トイレの個性を生かしたインスタレーションに加え、森山氏の写真がプリントされた特製トイレットペーパーも設置されるとのこと(在庫がなくなり次第、設置は終了)。訪れる人々に新たな「トイレ体験」を提供します。

Photo by Daido Moriyama
展示期間:2025年7月19日(土)〜9月23日(火)
展示作品撮影:森山大道
会場:以下のTTT整備の公共トイレ11カ所(カッコ内はデザインを担当したクリエイター)
・笹塚緑道(小林純子)
・幡ヶ谷(マイルス・ ペニントン / 東京大学DLXデザインラボ)
・七号通り公園(佐藤カズー)
・西原一丁目公園(坂倉竹之助)
・はるのおがわコミュニティパーク(坂 茂)
・代々木深町小公園(坂 茂)
・神宮通公園(安藤忠雄)
・鍋島松濤公園(隈 研吾)
・恵比寿公園(片山正通 / ワンダーウォール)
・恵比寿東公園(槇 文彦)
・広尾東公園(後 智仁)
※工事の進捗などにより展示期間が当初予定から変更される場合あり
※本展限定のトイレットペーパーは在庫がなくなり次第終了
主催:渋谷区
企画:MASTER MIND LTD.
協力:MATCH&CO、TANK、SKWAT、SWITCH
本イベントに関する渋谷区による報道発表(2025年7月3日)
https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/hodo/hodo-2025/hodo_20250703.html
渋谷区プレスリリース(2025年7月3日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000123554.html
東京・渋谷区内にある17カ所のトイレを、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に利用できる公共トイレに生まれ変わらせるプロジェクト。藤本壮介がデザインした〈西参道公衆トイレ〉の2023年3月24日供用開始をもって計画された17カ所全てのトイレがオープンしている。渋谷区では、男女平等およびLGBTへの対応など、多様性を尊重する社会を推進するための取り組みを行なっており、本プロジェクトへの協力もその1つ。2024年4月1日以降は渋谷区がトイレ維持管理を引き継いでいる(詳細は渋谷区2023年6月23日報道発表を参照)。
「THE TOKYO TOILET」プロジェクト特設サイト
https://tokyotoilet.jp/