CULTURE

黒川紀章の"中銀カプセル"2基を松竹が取得、再生

新スペース「SHUTL(シャトル)」を東銀座に今秋オープン

CULTURE2023.04.27

黒川紀章建築〈中銀カプセルタワービル〉の解体工事中に取り外され、”レスキュー”されたカプセルのうち2基が、東京・東銀座で新たな使命を担って活用されます。

松竹(東京都中央区築地4丁目)が2023年4月27日に計画概要を発表したもので、松竹グループが掲げるミッション「日本文化の伝統を継承、発展させ、世界文化に貢献する」に基づき、2023年秋に本社・東劇ビルに隣接してオープンする新たなスペース「SHUTL(シャトル)」内に、同社が取得した2基が設置されます。

新スペース「SHUTL(シャトル)」概要

松竹では、黒川紀章(1934-2007)が設計し、1972年の竣工から2022年に解体されるまで、銀座8丁目に建っていた、メタボリズムを代表する建築作品〈中銀カプセルタワービル〉のカプセルを、中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト(代表 前田達之)により、竣工当時のオリジナルの内装に復元した状態と、内装を取り払ったスケルトンの状態でそれぞれ1基ずつ、計2基のカプセルを取得しています。

中銀カプセルタワービル 夜間外観

中銀カプセルタワービル 夜間外観(2022年解体、現存せず|画像提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト)

中銀カプセルタワービル

中銀カプセルタワービル 外観(2022年解体、現存せず|画像提供:中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト)

今秋オープン予定の「SHUTL」では、この2基のカプセルをメインに据え、日本の伝統文化と現代の文化(カルチャー)の新たな接続方法を生み出すための実験場(ラボ)として再生します。メタボリズムが掲げた”新陳代謝”のテーマが、新旧の日本文化の融合を促進することを目的とする「SHUTL」に引き継がれます。

中銀カプセルタワービル

1972年竣工当時・オリジナルの内装に近づけて復元されたカプセル内観(撮影:山根かおり)

中銀カプセルタワービル カプセル(スケルトン)

スケルトン状態のカプセル内観(撮影:山根 かおり)

コンセプトと運営方針

松竹では、「SHUTL」の開設にあたり、コンセプトおよびスペースの運営方針を以下のとおり掲げています。

コンセプト:伝統と現代の新たな接続方法を生み出す実験場(ラボ)として「未来のオーセンティック」を生み出す

1.現代における日本文化の再定義/再評価の促進と未来の担い手の開拓

国内のアートから日用品にいたるまでのさまざまな創作物(モノ)や、そこから生まれる出来事(コト)、そしてそれらの文化資源を支えているにもかかわらず時代の変化により失われつつある技術や教養の価値について、現代的な視点や文脈に紐付けて再定義する。
加えて、映画や演劇分野を中心に日本文化の伝統を継承してきた当社ならではのユニークな視点で価値を付加することで裾野を広げ、将来の日本文化の担い手の潜在層を可視化する。

2.日本文化における若手育成機会の創出

若い表現者や技術者の発表の場や、取り組みを伝えるワークショップ、ユーザーや鑑賞者とのマッチングの機会を設けることで、将来の日本文化の担い手を育てる機会を創出する。

「SHUTL」から生み出されるムーブメントや新しい視点が、国内外へと伝播し、未来の日本文化の一端を担っていくことを期待しているとのこと。

「SHUTLを形成する3つのモチーフ

1.宇宙に放たれる飛行体の「シャトル」

無限・自由・夢といったイメージをもつ宇宙に打ち上げられるスペースシャトル。”SHUTL”から放たれる、個人の自由で既成概念に囚われない表現が、広く世に放たれることをイメージ。

2.離れた土地をつなぐ往復便の「シャトル」
1895年(明治28年)創業、京都にも映画産業の拠点をもつ松竹では、これまでにも、京都と東京の2都市を軸に、日本の伝統文化を現代へとつないできた。今回の「SHUTL」プロジェクトでも同様に、東西の文化や人材が移動し、出会い、交わることで、過去と未来、現在の首都と古都をはじめとした他都市をつなぎ、文化を相互輸送することを目指す。

3.織物において縦糸と横糸をつなぐ杼(ひ)の「シャトル」

日本文化を代表する織物生産の過程において、縦糸と横糸を繋ぐには杼(読み:ひ|シャトル)が不可欠。それぞれの分野において、長い歴史の中で受け継がれてきた文化や技術を、”SHUTL”が横断的につなぐことで、新しい日本文化としてかたちづくり、発信する役目を担う。

松竹 新スペース「SHUTL(シャトル)」ロゴマーク

「SHUTL」ロゴマーク(デザイン:三重野 龍氏) ※2023年4月発表時点で図形商標出願中

三重野 龍(Ryu Mieno)近影

グラフィックデザイナー:三重野 龍(Ryu Mieno)プロフィール:1988年生まれ。2011年京都精華大学(グラフィックデザインコース)卒業。京都でフリーのグラフィックデザイナーとして活動。美術や舞台作品のロゴデザインや広報物の制作を中心に、文字を軸にしたグラフィックデザインを実践。
https://www.instagram.com/mienoryu/

カプセルはレンタルも可能!

計画地には「SHUTL」専用の建物が新築され、その中に2基のカプセルが据え置かれます。
ここで松竹は、「スペースレンタル事業」と「自主企画の実施と作品・グッズ販売」事業の2つを軸に展開。運営パートナーとして、京都を拠点とするMAGASINN.Inc(マガザン|代表取締役:岩崎達也)を迎え、同社のキュレーションにより、スペースのコンセプトを体現するような自主企画やイベントなどが展開されます。

マガザン ロゴマーク

「SHUTL」のスペースコンセプト、メディア設計・運営・自主企画はMAGASINN.Inc(マガザン)が担当

また「SHUTL」では、カプセルの貸し出しも1基から計画しており、美術・工芸作品の企画展示・販売や、映像上映などを通じたイベントの企画・実施も可能。それぞれのカプセルの空間や特徴を活用した、多彩かつ独自の企画が寄せられることを期待しています。

松竹 新スペース「SHUTL(シャトル)」外観イメージ

松竹 新スペース「SHUTL(シャトル)」外観イメージ

「SHUTL」エリアマップ

「SHUTL」周辺マップ

「SHUTL(シャトル)」施設概要

計画地:東京都中央区築地4丁目1-8(東劇ビル隣、旧住居表示につき今後変更される可能性あり)
建物規模:地上1階建(1棟)
構造:鉄骨造
延床面積:88.44m²(26.75坪)
天井高:4.1m~4.3m
※2023年4月27日発表当時の計画、今後変更となる場合あり

SHUTL(シャトル)公式サイト
https://shutl.shochiku.co.jp

詳細・松竹プレスリリース(2023年4月27日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000120348.html

中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクト(代表 前田達之)

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