2023年6月30日初掲、7月1日会場風景写真を追加、7月4日作家による本展開催の経緯と作品解説を追記
東京・西麻布の[Karimoku Commons Tokyo]1Fのギャラリースペースにて、テキスタイルデザイナーの鈴木マサル氏による展覧会「テキスタイルの表と裏 -Looking through the overlays」が7月1日より開催されます。
会場デザインを、既存建物をリノベーションして2021年にオープンした、[Karimoku Commons Tokyo]の設計を手がけた芦沢啓治氏が担当しています。
鈴木マサル氏プロフィール
2004年からファブリックブランド・OTTAIPNU(オッタイピイヌ)を主宰。色鮮やかなプリントテキスタイルを中心に生地本来が持つ魅力にあふれたコレクションを展開しています。自身のブランド以外にも、マリメッコ、ユニクロ、カンペールなど、国内外の多くのブランドからテキスタイルプロダクトを発表。また、テキスタイル以外にもさまざまなプロジェクトに参画し、ファニチャー、プロダクト、アパレル、空間など多様なシーンに向け、パターンデザインや自身のテキスタイルを軸にしたデザインを提供しています。
2014年からスタートした富山の魅力を模様で表現した「富山もよう」が第35回新聞広告賞を受賞。2016年4月にイタリア・ミラノで開催された展覧会「Imagine New Days」(主催:アイシン精機)に参画し、Milano Design Award 2016 “BEST ENGAGEMENT by IED” を受賞。2017年12月に三菱地所アルティアム(福岡)にて展覧会「鈴木マサルのテキスタイル 目に見えるものすべて色柄」を開催。著作に『鈴木マサルのテキスタイル』(誠文堂新光社刊、2016年)がある。現在、東京造形大学教授、有限会社ウンピアット取締役。
Masaru Suzuki Website
http://masarusuzuki.com
Instagram: @masaru_suzuki_textile
デザイナーメッセージ
“テキスタイルデザイナーとしてこれまでにさまざまな展示を行なってきましたが、傘や鞄などのプロダクト商品がメインとなるものが多く、純粋にテキスタイル自体を主役にした展覧会を行っていなかったことに気づきました。それと同時に、最近手がけている仕事が面積の小さいものに偏ってきていると感じ、「もっとデザインの文脈に沿った、空間へのアプローチとしてのテキスタイル」の制作に向けた思いが強くなっていました。
また、基本的に何かに加工されるための「素材」としてテキスタイルは存在しますが、プロダクトとしてもっと自立して存在するためにはどうしたら良いか?と考えた時、テキスタイルの平坦な形状ゆえの表層、表面性に着目しました。テキスタイルには表側と裏側があります。もちろん両面使いを意識した織物などもありますが、平坦な形状のテキスタイルは必然的に表と裏が存在します。服などは表側だけを装飾している事実に気づきますし、空間に設置される時も概ね背中に壁とか窓とかを背負い、場所が限定されます。もしもテキスタイルに裏表がなければ使い方もマインドも自由になり、自立し、色々なことから開放されるのではないかと考えました。
今回発表するテキスタイルは両面からプリントされ、柄が裏側に染み込んでかすれた色面とベタの色面が重なり、独特の表情が展開されます。生地の厚さや染料の染み込み方など、さまざまなリサーチと試作を繰り返し、制作しました。空間に対して、どんなテキスタイルが必要なのか? パターンデザインを主体としながら、色柄の持つ華やかな効果をどのように付加する事ができるのか? 建築家 芦沢啓治氏によって構成された展示空間の中で展開します。Karimoku Commons Tokyo まで、是非ご来場ください。
芦沢啓治氏コメント:「鈴木マサルさんから会場構成を依頼され、展示のコンセプトを聞いた際に、彼のテキスタイルデザインが空間を鮮やかに切り込み、そして拡がっていく印象を持ちました。空間とテキスタイルの関係は、それが絶妙に異なる「表」と「裏」を持ったとき、それぞれにどのような可能性が生まれるのか、どのような拡がりを持つのか・・・実のところ、それがどうなるのかわからないところもあって、自分だけでは成し得ない空間だけに僕も楽しみにしています。」
鈴木マサル氏による本展開催の経緯および作品解説
「ここ数年の自分の活動を振り返ってみて、わりと小さいものばかりつくっているなと気づきました。もう少し大きいものをつくりたいなと、空間にアプローチできるような、インテリアとしても機能するテキスタイルをつくろうと考えました。
ご存知のように布には表と裏があります。そして空間にテキスタイルを配置するときにはだいたい後ろが壁になっていて、片側からしか見られません。そこで、どちら側からも見られるように、両方からプリントを施したのが今回の新作です。
表と裏がないので、どこにでも掛けられる。芦沢さんにデザインしてもらったこの会場のように、空間を緩やかに分断する布としても機能します。服の生地にすれば、表と裏の両方で着ることができるでしょう。テキスタイルが入っていく領域が広がるのではないかと考えたのです。」「今回の新作はすべて、Karimoku Commons Tokyoさんのこの空間で展示されることを前提にデザインしました。空間というのは、水平垂直でできていて、なにもないと硬質で、人の気配や生活感というものがありません。テキスタイルとは、そこに入っていく花のようなものではないかと考えています。ただし今回の展覧会では、なにか具象的な絵柄ではなくて、抽象的な柄のテキスタイルでもって空間を動かしてみたいと考えました。
空間に影響を与えることができるテキスタイルというのは、常々僕が考えていることでもあります。なにもない空間に対してどのように作用するかを考えて、今回の新作をデザインしました(編集部註. 会場デザインのため展示されなかった新作テキスタイルあり)。そして今回の会場はシャープな印象にしたかったので、会場デザインを担当された芦沢さんには『建築的にデザインしてほしい』とお願いしています。
芦沢さんは、ファブリックを展示できてパーテーションにもなる素敵な什器をデザインしてくれました。これならプロダクトとして自立して、空間に自由に入っていける。そういうテキスタイルをつくりたかった。奥のギャラリースペースの棚に設置された建具(開き戸)もぜひご覧ください。」
「そのほか、カリモク家具さんと石巻工房とのコラボ(石巻工房 by Karimoku)では、芦沢さんがデザインしたベンチやスツールに、新作の布の色から僕が色を選んで配色した新作家具も展示されています。僕はふだんわりとビビッドな色を使うことが多いのですが、今回はニュートラルな色合いとなっているのも特徴です。」(6月30日メディア内覧会にて、鈴木マサル氏談)
本展では、鈴木氏のテキスタイル作品のほか、鈴木氏と[石巻工房 by Karimoku]がコラボレーションした木製の家具やアートオブジェも発表されるのも見どころです。
ピュアオークのISHINOMAKI STOOL by Karimoku や、ISHINOMAKI BENCH by Karimoku に、テキスタイルの版を重ねるように配色が施された特別モデル。「石巻工房 by Karimoku」の新作として披露されるハイスツールのプロトタイプも含まれます。
家具のほか、アートオブジェ「KARIMOKU BIRD」も展示され、本展の会場限定で販売されます(ハイスツールは展示のみ)。
会期中の7月7日の夜には、鈴木マサル氏と芦沢啓治氏、展示コーディネーションを担当した藤本美紗子氏が登壇するトークイベントも開催されます。
会期:2023年7月1日(土)~7月22日(土)
休業日:日曜
営業時間:12:00-18:00
会場:Karimoku Commons Tokyo 1F ギャラリースペース
所在地:東京都港区西麻布2丁目22-5(Google Map)
入場料:無料
主催:UNPIATTO Inc.
協賛:カリモク家具
会場デザイン:芦沢啓治
グラフィックデザイン:佐々木 拓、金井あき
展示コーディネーション:藤本美紗子
トークイベント「空間におけるテキスタイル」
日時:2023年7月7日(金)18:30-20:00(18:00開場)
会場:Karimoku Commons Tokyo ※オンライン配信あり
会場定員:20名(先着順に受付)※受付終了
登壇者:鈴木マサル、芦沢啓治、藤本美紗子
進行:デザインジャーナリスト 川上典李子
参加方法:会場・オンラインともにPeatixページより要申込
聴講費:無料
https://kct20230707online.peatix.com/
Karimoku Commons Tokyo Website
https://commons.karimoku.com/