2024年3月29日初掲、6月21日会期延長を発表
東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTにて、企画展「未来のかけら: 科学とデザインの実験室」が3月29日に開幕します。28日に開催された内覧会を『TECTURE MAG』では取材しました。
本展の展覧会ディレクターを務めるのは、幅広い工業製品のデザインや先端技術を具現化するプロトタイプの研究を長年にわたり行ってきた、デザインエンジニアの山中俊治氏。慶應義塾大学、東京大学で教鞭を執り、内外の研究者、技術者、企業などさまざまなバックボーンをもつ人々とともに、最先端の技術にかたちを与える研究に取り組み、数多くのプロトタイプやその萌芽となるプロトタイプを生み出してきました。かたちになったそれらを披露する展覧会も教員時代に開催するなど、技術と社会との接点をつくることにも腐心してきました。
21_21 DESIGN SIGHTで開催される本展では、現在進行中のものを含めたプロトタイプの数々が展示されます(会場構成:萬代基介建築設計事務所)。科学とデザインが織りなす無数の可能性、幾多の”未来のかけら”たちが一堂に会します。
ディレクターズ・メッセージ
いつの時代も、最先端の科学技術とデザインはすぐそばにありました。科学者が生み出す新しい知識や技術はデザインを通じて人々の元へ届けられました。デザイナーたちによって開かれた新しいライフスタイルは、次の研究のトリガーであり続けました。しかしながら、科学者たちの本当の関心は大いなる真理を探究することにあり、デザイナーたちの目標は人々の幸福な体験や豊かな社会の実現にあるので、両者は必ずしも同じ道を歩むことはできません。科学とデザインは近くにいながら、その間には越えがたい溝もあるのです。
そのような緊張感をはらんだ科学とデザインの関わりには、初めてかのような新鮮な出会いがあり、葛藤があり、ドラマがありました。そして時代ごとに、自動車や家電、コンピュータ、スマートフォン、SNSなど、私たちの生活が一変するようなイノベーションを生み出してきました。
本展は、今まさに起こっている科学とデザインの邂逅により芽生えつつある「未来のかけら」を探るものです。本展ディレクターである山中は、2001年以降、先端技術の研究者たちとともにちょっと未来を感じさせるさまざまなプロトタイプをつくってきました。2013年に東京大学に教授として着任してからは、まだ実用化されていない先端技術に形を与え、研究者と共に未来を探る「Design-Led X(価値創造デザインプロジェクト)」をスタートさせました。
企画展「未来のかけら」では山中のそうした活動をコアに、研究者とクリエイターたちの新たな「出会い」を集めます。最先端のロボティクス、積層造形、構造形態学、身体拡張、バイオエンジニアリングなどの研究者たちと、デザイナー、アーティストたちがタッグを組んで未来のかけらを錬成します。サイエンスフィクションのようなプロットにとどまらず、質感や動きを伴った体験を共有できるリアルな物語の断片です。実験室で生まれたばかりのピースを繋ぎ合わせてまだ見ぬ世界を描くのは、ご来場いただく皆さんです。
山中俊治
山中俊治(やまなか しゅんじ)プロフィール
1957年生まれ。東京大学工学部卒業後、日産自動車のカーデザイナーを経て1991-94年東京大学特任准教授。1994年にリーディング・エッジ・デザインを設立。デザイナーとして腕時計から家電、家具、鉄道車両に至る幅広い製品をデザインする一方、科学者と共同でロボットビークルや3Dプリンタ製アスリート用義足など先進的なプロトタイプを開発してきた。Suicaをはじめ日本全国のICカード改札機の共通UIをデザインしたことでも知られる。
2008年より慶應義塾大学教授、2013年東京大学教授、2023年3月に東京大学を退官、同学特別教授。
ニューヨーク近代美術館永久所蔵品選定、グッドデザイン賞金賞、毎日デザイン賞、iF、Red Dot など受賞多数。
参加作家:
荒牧 悠+舘 知宏
稲見自在化身体プロジェクト+遠藤麻衣子
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE+Nature Architects
千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)+山中俊治
東京大学 DLX Design Lab+東京大学 池内与志穂研究室
nomena+郡司芽久
村松 充(Takram)+Dr. Muramatsu
山中研究室+今仙技術研究所・稲見自在化身体プロジェクト・臼井二美男・宇宙航空研究開発機構(JAXA)・岡部 徹・河島則天・斉藤一哉・SPLINE DESIGN HUB・鉄道弘済会義肢装具サポートセンター・新野俊樹・マンフレッド・ヒルド・吉川雅博展覧会ディレクター:山中俊治
企画:野村 緑(fuRo)、村松 充、阪本 真
グラフィックデザイン:岡本 健(岡本健デザイン事務所)
会場構成:萬代基介(萬代基介建築設計事務所)
テキスト / 企画協力:角尾 舞
テクニカルディレクション:古田貴之(fuRo)、杉原 寛、遠藤 豊(LUFTZUG)
荒牧 悠:慶應義塾大学政策メディア研究科修了。多摩美術大学美術学部統合デザイン学科講師。構造や仕組み、人の認知に注目した作品を制作している。つくるオブジェは動いたり動かなかったり、扱う材料もさまざま。
主な参加展覧会に「デザインの解剖展: 身近なものから世界を見る方法」(21_21 DESIGN SIGHT、2016)、個展「荒牧 悠 “ こう(する+ なる)” ― phenomenal #02」(nomena gallery Asakusa、2022)など。
舘 知宏:東京大学大学院総合文化研究科教授。2005年東京大学工学部建築学科卒業。2010年同大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。
2002年から折紙設計をはじめ、Origamizer、Freeform Origami などの計算折紙ツールを開発。自然と芸術における形状、機能、製作を探求し、折紙工学、構造形態学、コンピュテーショナル・ファブリケーションなどが専門。東京大学教養学部でSTEAM教育に従事。
稲見自在化身体プロジェクト:稲見昌彦(東京大学大学院情報理工学系研究科)をはじめとする研究者約100人による研究プロジェクト。人間が物理 / バーチャル空間でロボットや人工知能と”人機一体”となり、自己主体感を保ったまま自在に行動することを支援する「自在化身体技術」を研究開発。またそれらが認知、心理、神経機構にもたらす影響の解析も行う。2017年10 月から2023年3月にかけて国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)ERATOの同名プロジェクトにて、挑戦的な分野融合型基礎研究として推進され、現在も展開中。
遠藤麻衣子:映画監督/アーティスト。ヘルシンキ生まれ、東京育ち。ニューヨークで創作の後、帰国。2011年日米合作の長編映画『KUICHISAN』で監督デビュー。以後、監督作をロッテルダム映画祭など海外でも公開。2022年オンライン映画『空』が東京都写真美術館に収蔵。2023年日仏で取材した短編映画を完成。
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE:「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」は、つくり手と受け手とのコミュニケーションを広げ、未来を織りなしていくブランド。1998年に発表した「A-POC」は、服づくりのプロセスを変革し、着る人が参加する新しいデザインのあり方を提案してきた。時代を見つめながら進化を遂げてきた「A-POC」を、A-POC ABLE ISSEY MIYAKEのデザイナー・宮前義之率いるエンジニアリングチームがさらにダイナミックに発展させる。1枚の布の上に繰り出すアイデアは多彩に、着る人との接点は多様に。異分野や異業種との新たな出会いから、さまざまな「ABLE」を生み出している。
Nature Architects:メタマテリアルを活用した独自の設計技術によって従来製品を超える機能を実現し、既存製造設備で量産性を考慮した設計案を顧客に提供するエンジニアリングサービス会社。自動車、建設、家電、航空宇宙まで幅広い業界の根幹となる高付加価値な部材や製品の設計開発を行なっている(代表:大嶋泰介)。
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo):未来のロボットの研究開発、産学連携による新産業の創出、プロダクトデザインの追求の3つを基本理念とする。これらの実現のために、複数の専門分野を横断するチームづくりを行い、千葉工業大学の支援を受け、学際的な研究組織として設立され、ロボット産業の革新を目指し活動している(所長:古田貴之)
東京大学DLX Design Lab:東京大学生産技術研究所内に2016年に設立されたユニークなクリエイティブ・スタジオであり、「デザインで価値を創造する」をミッションとしている。その国際的なチームは科学者やエンジニアとの緊密な連携により革新的なアイデア、プロダクト、サービスのプロトタイプを開発している。
東京大学 池内与志穂研究室:神経科学や組織工学などを融合した研究を行っている。ヒトのiPS細胞などから神経細胞や組織(オルガノイド)をつくることを通じて、神経系ができあがる仕組みや、脳が機能するメカニズムなどを理解することを目指している。
nomena:2012年設立(代表:武井祥平)。日々の研究や実験、クリエイターやクライアントとのコラボレーションを通して得られる多領域の知見を動力にして、前例のないものづくりに取り組み続けている。近年では、宇宙航空研究開発機構JAXA など研究機関との共同研究や、東京2020オリンピックにおける聖⽕台の機構設計などに参画。
郡司芽久:東洋大学生命科学部助教。2017年3月に東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程を修了し、博士(農学)を取得。国立科学博物館、筑波大学を経て、2021年4月より現職。専門は解剖学・形態学で、キリンをはじめとする大型哺乳類の身体構造の進化に興味をもつ。第7回日本学術振興会育志賞を受賞。
村松 充(Takram):デザインエンジニア。慶應義塾大学・東京大学にて、ロボットや人間拡張デバイスのデザインなど、先端テクノロジーをベースとしたデザインプロジェクトを実施。国内外で展示発表を行う。2015年「アジアデジタルアート大賞」インタラクティブアート部門大賞、2016年「STARTS Prize」Nomination、2022年「Gold A’ Design Award」受賞。2023年よりTakramに参加。
Dr.Muramatsu:リサーチャー、博士(政策・メディア)。慶應義塾大学政策・メディア研究科修了後、東京大学生産技術研究所 Prototyping & Design Laboratory(山中俊治研究室)特任助教に着任(〜2023年)。生き物のような認知をもたらすロボットのデザインプロジェクトを中心に、プロトタイピング、デザインエンジニアリングを核に最先端技術の未来を描く、さまざまな研究プロジェクトに従事。
萬代基介建築設計事務所による展示台は、2018年にブラジル・サンパウロほか海外における日本の文化発信拠点・JAPAN HOUSEで開催された「Prototyping in Tokyo」展で使用されたものをベースに再構成。天板の仕上げは亜鉛メッキ鋼板とした。いろいろな高さで薄い天板を支持するポイントをつくり、鉄板の自重による”たわみ”そのものを美しい曲線としてデザインしている(形状解析:木内建築計画事務所 [解析はこちら] / 構造設計協力:平岩構造計画)。
物の関節に注目した骨格模型の展示。骨格模型は3Dプリンタ出力(光造形)で、関節部にマグネットが付けてあり、来場者が手で触れ、脱着したり角度を変えることができる。
会期:2024年3月29日(金)〜8月12日(月・休) 9月8日(日)※会期延長
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
所在地:東京都港区赤坂9丁目7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン(Google Map)
休館日:火曜
開館時間:10:00-19:00(入場は18:30まで)
入場料:一般1,400円、大学生800円、高校生500円、中学生以下無料
※各種割引、オンラインチケット購入方法については21_21 DESIGN SIGHTウェブサイトを参照
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、経済産業省、港区教育委員会
特別協賛:三井不動産
本展詳細 / 21_21 DESIGN SIGHT ウェブサイト
https://www.2121designsight.jp/program/future_elements/index.html
本展の会期中、オンライン上の架空のギャラリー・ELEMENT GALLERY(エレメントギャラリー)も開廊。本展に関連する展示が行われます。
ELEMENT GALLERY(エレメントギャラリー)特集記事(2023年1月)
フィクションとリアルを横断するオンラインギャラリー”ELEMENT GALLERY”がオープン、旧築地市場よりインスパイアされた空間をFICCIONESが構築
開催日時:2024年4月12日(金)17:00-19:00
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2 B1Fロビー
登壇者:山中俊治、岡本 健(岡本健デザイン事務所)、萬代基介(萬代基介建築設計事務所)、角尾 舞
参加方法:要申込(※4月1日(月)12:00より、21_21 DESIGN SIGHTウェブサイトにて受付開始、先着順に受付、定員に達し次第終了)
会場定員:50名
特別協賛:三井不動産
詳細
https://www.2121designsight.jp/program/future_elements/events.html