東京・代官山に新たな複合施設〈Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)〉が10月19日に開業しました。
立地は、東急東横線代官山駅正面口の前。東急不動産が日本初の外国人向け高級賃貸アパートとして1955年に開業した代官山東急アパートが建っていた跡地で、八幡通りと代官山通りの2本の道路に接した、代官山でも最も人の往来があるエリアです。
『TECTURE MAG』では、施設名称の発表前、2021年5月に「(仮称)代官山町プロジェクト」着工ニュースを掲載しています。
建築家の隈 研吾氏がデザイン(基本設計)を手がけた地上10階+地下2階のMAIN棟と、末光弘和氏と末光陽子氏が率いるSUEP.が設計したTENOHA棟の2棟が竣工。2棟あわせて、事業主である東急不動産が広域渋谷圏[*]で掲げる「職・住・遊」の近接を具現化し、「緑 / 環境サステナブル」と「食」をキーワードに、豊かで新しいライフスタイルを提案します(10月19日時点で一部店舗は開店準備中、以降順次開店・開業予定)。
“循環する建築”をテーマにSUEP.が設計した〈Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)〉TENOHA棟がオープン
10月12日に開催された、MAIN棟とTENOHA棟のメディア向け内覧会を『TECTURE MAG』ではそれぞれ取材。本稿ではMAIN棟について詳しくレポートします(本稿の画像、特記なきものは全て東急不動産提供)。東急不動産が本プロジェクトにて本格的に進出する「食のビジネス」も注目です。
・Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山) 施設概要 ▶︎ 読む
・“働く・暮らす・遊ぶ”の3つのシーンがシームレスに融合する次世代型複合施設とは? ▶︎ 読む
・3つのシーン その1:働く ▶︎ 読む
・3つのシーン その2:暮らす ▶︎ 読む
・レジデンス / 隈研吾、齊藤太一、平野紗季子の3氏によるライフスタイル提案住戸 ▶︎ 読む
・MAIN棟をデザインした隈研吾氏コメント ▶︎ 読む
・3つのシーン その3:遊ぶ ▶︎ 読む
・食のプロセスエコノミー拠点「日本食品総合研究所」を開設 ▶︎ 読む
Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山) 施設概要
MAIN棟
所在地:東京都渋谷区代官山町20番23号(Google Map)
用途:賃貸住宅、商業店舗、事務所(シェアオフィスを含む)、駐車場
駐車場を除く用途構成:一般住戸(賃貸住宅)全57戸(1LDK〜3LDK ※「ライフスタイル提案住戸」3戸を含む)/ SOLSO HOME、日本食品総合研究所(研究所・調理室・食糧庫・喫茶室)、ザ・ガーデン自由が丘、Blue Bottle Coffeeなど商業店舗 / 会員制シェアオフィス・Business-Airport Daikanyama(ビジネスエアポート代官山)/ほか(一部店舗のみ10月19日開業、以降順次予定)
敷地面積:約4,084m²
延床面積:約21,096m²
構造規模:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造 地上10階、地下2階
基本設計:隈研吾建築都市設計事務所
実施設計:竹中工務店・東急設計コンサルタント 共同企業体
ランドスケープ:DAISHIZEN
デザインマネジメント:日建設計、マイオ建築研究
施工:竹中工務店
開業日:2023年10月19日TENOHA棟(TENOHA代官山)
所在地:東京都渋谷区代官山町20番12号
用途:店舗、集会所
敷地面積:約422m²
延床面積:約198m²
構造規模:木造2階
企画:RGB Inc.
設計:一級建築士事務所SUEP.
施工:青木工務店Forestgate Daikanyama Website
https://forestgate-daikanyama.jp/
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〈フォレストゲート代官山〉は、代官山駅正面口から西側をはしる八幡通りまで、4,000m²を超える敷地内の真ん中を誰でも自由に通り抜けできるようになっています。さらに、この敷地内通路は、地上10階+地下2階という規模で、かつ中庭を内包して建てられたMAIN棟を貫通しており、地下1階から2階の低層部が来街者に開放されているのが大きな特徴です。
敷地内通路の両側と八幡通りに面して、カフェや物販店などが配置され、次世代の複合施設として、「働く」「暮らす」「遊ぶ」の異なるシーンがシームレスに融合した、「職・住・遊近接の新しいライフスタイル」を提供する次世代型の複合施設となっています。
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街に賑わいをもたらし、本物件の住民だけではなく、来街者・周辺住民にも豊かで新しいライフスタイルを提案する魅力的な商業ゾーン。駅と八幡通りをつなぐアプローチ沿いにそれぞれの店舗が顔を出し、緑豊かな吹き抜けが広がっており、豊かな時間が流れるその場所には、『緑・環境サステナブル』と『食』を主軸とした、代官山ライフを実現するのにふさわしい店舗が揃っています(順次開業予定)。
MAIN棟3階には、シェアオフィス・Business Airport Daikanyama(ビジネスエアポート代官山)が10月19日に開業。クリエイティブで上質なワークスペースと、きめ細やかなサービスを提供します。
「ビジネスエアポート代官山」では、ゲストを招いての打ち合わせ、ソロワーク、会員同士の語らいの場といったさまざまなシーンで利用できる空間を用意。フロアおよび中庭に面した屋外テラスには、本プロジェクトでグリーンデザインを担当したDAISHIZEN(代表:齊藤太一)による植物の緑が多彩に取り入れられており、賑わいと落ち着きがシームレスに共存した空間となっています。
Business Airport Daikanyama(ビジネスエアポート代官山)サービス詳細
https://business-airport.net/shop/daikanyama/
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MAIN棟の4階から10階は、メゾネットを含む57戸の高級賃貸レジデンスが展開するフロアです。
コンセプトは「代官山の森の木箱に棲む。」。立体的な森を想起させるMAIN棟の大半を占めるレジデンスのバルコニーには、施設側が管理する植栽が計画的に配置され、渋谷区という都会の住まいから常に緑が感じられるようデザインされました。
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「職・住・遊 近接の新しいライフスタイル」を提案する〈フォレストゲート代官山〉の主軸の1つとなるレジデンス(高級賃貸住宅)には、暮らしを拡げる実験的な取り組みとして、3名のパートナー(隈 研吾、齊藤太一、フードエッセイストでフードディレクターの平野紗季子の3氏)が「ライフスタイル提案住戸」をそれぞれ1戸ずつデザイン。10月12日のメディア内覧会にて内部が公開されました(以下、見学順)。
フォレストゲート代官山「ライフスタイル提案住戸」
1.隈 研吾:こころ With Totonou「半分くつろぎ半分整う家」
2.平野紗季子:食 With Delicious「Allday Dinnig House」
3.齊藤太一:緑 With Green「森のすみか」
隈 研吾氏による、過ごし方の豊かさを五感で感じる、心身が整う場「半分くつろぎ半分整う家」
外界と少し切り離された印象の抽象的な空間とし、自らと向き合い精神が研ぎ澄まされる住まい
提案者コメント:「コロナによって今、都市や建築も大きな転機を迎えている。従来の、都心部に高層ビルを建てることが目標の時代は終わりを告げ、新しい分散の形を人々は模索し始めている。
今回のコンセプト住戸では、新しいライフスタイルに合った、新しく自由で柔らかな建築、柔らかな住まいというものを追求した。室内にはギャザー加工を施した布を用いて、布の洞窟のような空間を創った。集合住宅の中に、柔らかくヒューマンな、未来のスペースができあがった。」(隈 研吾)
平野紗季子氏による、自分の暮らしへのこだわりと、日常生活との接点をひろげる場
食卓を暮らしの中心とし、食へのこだわりや魅力を、住空間の中で実践・発信できる、24時間食事を満喫できる住戸
提案者コメント:「食の幸福を常に中心に置いた生活を長らく送ってきました。食を愛でることは人生を愛でることと同義であり、食の喜びによって私の人生は明るく照らされてきました。食べ物には感謝しかありません。このたび、朝起きてから寝るまでのいかなる食の時間も逃さず、そのひとつ1つに心を動かして生きていくことが叶う住戸を計画できたことを大変嬉しく思います。
朝陽をたっぷり浴びながらの朝食から、深夜のベッドでのアイスクリームまで。食を愛するすべての人にとってきっと夢のような物件が、人と食との関わりや、食を通した人と人、あるいは人と街との関わりを、更に豊かなものへと更新していくことを願っています。」(平野紗季子)
〈Forestgate Daikanyama〉の植栽計画・ランドスケープを担当したDAISHIZENの齊藤太一氏による、サンルームにより内と外の境界線が溶け合い、自然を感じられる素材感に包まれる住まい
提案者コメント:「森の中にある隠れ家のような空間、そこには自然と共にある暮らしがあります。
仕事をしたり、趣味を楽しんだり、友人を招いて食事をとったり。
何気ない日常が緑と緩やかに繋がり、毎日を彩ってくれる。
小さな豊かさのあるライフスタイルを楽しんでいただければと思います。」(齊藤太一)
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MAIN棟をデザインした隈研吾氏コメント
「代官山という場所は、渋谷という「大きな街」の脇にある人間的で優しいスケールを持った、静かな中に賑わいのあるストリートである。その特質を木箱という集合体に翻訳して集合住宅という形で、街にお返ししたいと思った。木箱は温かな質感を持ったヒューマンスケールの象徴であり、さまざまな木箱が組み合わさることで街に多様性と賑わいを与えたいと思った。そして木箱の周りにあるアトリウムの空に吹き抜けた空間が、代官山の新しいストリートの象徴になるだろうと考えた。
そのような木箱のイメージを創るために、われわれは木の質感を持ったアルミニウムという新しい素材に挑戦した。実際の木を使うのはメンテナンス上の問題もあり、木の質感を持ったアルミニウムを使うことで自然素材の温かさとメンテナンス性を両立したようなデザインとした。さらにそのアルミパネルを緑と組み合わせることによって、緑も木の質感もお互いが引き立てあえるようなデザインとなった。
住戸のエントランスは住戸全体の玄関になるような、格式がありながらもヒューマンなスペースを作ろうと考えた。そのために岡山県産の耳付きの間伐材を採用した。耳付きの間伐材にすることで、より自然素材の温もりが感じられ、このプロジェクト全体の自然素材に対する強いこだわりが感じられるようなエントランスになった。岡山は日本で一番のヒノキの産地で、われわれも岡山のヒノキを様々なプロジェクトで使っており、その豊かな質感は是非今回代官山で皆さんにお見せしたい。
今コロナによって都市や建築も大きな転機を迎えている。従来の都心部に高層ビルを建てることが目標の「集中の時代」は終わりを告げ、新しい分散の形を人々は模索し始めている。分散の形を叶えながら都心部へのアクセスも容易な代官山という場所は、「集中の時代」から「分散の時代」へ呼応する新しいライフスタイルを象徴する場所になるだろう。新しいライフスタイルに合った、新しく自由で柔らかな建築、柔らかな住まいというものを追求した。同時にサステナビリティがテーマの時代にも相応しいような新しいデザインができあがった。」(隈 研吾)
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“働く・暮らす・遊ぶ”の3つのシーンがシームレスに融合する複合施設〈フォレストゲート代官山〉。3つめの「遊ぶ」は、レジデンスの住民だけではなく、来街者・周辺住民に向けても豊かで新しいライフスタイルを提案する商業ゾーンの展開です。代官山の街にさらなる賑わいをもたらします。
地下1階には、約200坪の規模で「ザ・ガーデン自由が丘」がオープン(2023年12月予定)。さらには、〈フォレストゲート代官山〉全体の植栽計画を担当した、齊藤太一氏率いるDAISHIZENの事業・SOLSOが、初のパーソナルサービス&ショップを1階に出店しています。
商業ゾーンでそのほかの注目は、東急不動産と、食の領域で多様なサービスを展開し、次世代の食文化創造に挑戦するフード・インキュベーター、イートクリエーター(代表取締役:永砂智史)の2社がタッグを組み、2022年12月15日に共同で設立された新会社・日本食品総合研究所による店舗と付帯するサービスです。
日本食品総合研究所は、食に関わる人やコミュニティ、企業や自治体をつなげるハブとして、プロジェクトベースで食にまつわる企画・開発・製造・提供のサイクルを循環させていくプラットフォームです。フォレストゲート代官山においては、MAIN棟の低層部にて、ラボラトリー&ファクトリー「研究所」、テストキッチン「調理室」、グローサリー「食品庫」、カフェ&ワインバー「喫茶室/ Mary Jane」の4つのスペースで構成されます。
このうち、MAIN棟2階に構えた「研究所」は、新商品や業態・ブランドづくりに挑戦したいシェフや企業・団体・自治体に対して、デザイン性の高い商品企画から開発、試作、製造までをサポートする拠点・ODM(Original Design Manufacturing)ファクトリーとして運営されます。
従来の「開発」や「製造」に偏りがちだった機能的なビジネスモデルから、商品を開発した後の販売やプロモーションまで見据えてサービスを提供するのが特徴です。「企画」や「体験」をかけ合わせることで、食のコミュニティを通じて、デザイン、ファッション、アート、音楽、シネマ、トラベル、SDGsなどさまざまなカルチャーと交差しながら、イノベーティブなサービスを提案していく計画とのこと。
今後は、東京を中心に飲食店運営、施設プロデュースやブランディングなど、食の領域で多様なサービスを展開するイートクリエーターのシェフネットワークや企画力と、広域渋谷圏において「働く・遊ぶ・暮らす」が融合した持続性あるまちづくりを目指す東急不動産がもつ多様なアセットを掛け合わせ、ビジネス展開をしていく予定です。
フォレストゲート代官山 ウェブサイト「日本食品総合研究所」案内ページ
https://forestgate-daikanyama.jp/100/
フォレストゲート代官山 ウェブサイト
https://forestgate-daikanyama.jp/
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“循環する建築”をテーマにSUEP.が設計した〈Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)〉TENOHA棟がオープン
*.広域渋谷圏:東急グループの渋谷まちづくり戦略において定めた、渋谷駅から半径2.5kmのエリアを指す