■ 芝生広場をどう活かす!? 恒例のインスタレーション、今年は?
現在開催されている、デザインとアートの祭典「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2021」。
東京ミッドタウンの芝生広場で繰り広げられる、建築家やデザイナーのインスタレーション作品を毎回楽しみにしている人は多いはず。
今回、芝生広場でのインスタレーションを担当したのは建築・デザイン事務所「noiz(ノイズ)」。
noizの豊田啓介氏によるプレスツアーに加えて、TECTURE MAGで取材した内容をお届けします。
Photo: TECTURE MAG
■ 視点を変えるデザイナーのまなざしを疑似体験
展示のタイトルは『unnamed ─視点を変えて見るデザイン』。
「僕たちはデザインというものが形になって固まる状態になる手前の、曖昧な状態を皆さんにも体験してもらいたいと考えました。
デザイナーは普段そうしたことを考えているのですが、形という結果は、受け取り手や環境次第ですし、価値観は変わってきます。
これを見る方には『固まった形を受け取るだけでいいのだろうか?』という感覚やヒントを、少しでも持って帰っていただければと思います」。
noizは、昨年に開かれる予定であったデザインタッチでも、屋外作品展示を計画していた。
COVID-19の影響がまだある今年も、作品に直接触れられない状況がまだある中で、noizが重視したのは「体験」。
「現地に来ないと分からないもの、実際に体を動かして空間的な位置関係を感じ、視点を移動しないと体験できないようなものにしたいと考えました」(豊田氏)。
またnoizといえば、コンピューテーショナルデザインに積極的に取り組んでいることで知られる。
今回も「コンピュータの計算能力やシミュレーションがなければできないような形を検討した。人間のほうが動いたり、環境が変化することで、モーターやキネティクスで動かさなくても同じ効果や発見、多様性がつくれるはず。そのための過程としてコンピュータ技術を使っています」と豊田氏はいう。
▲ Design Process © noiz | 2つのシルエットから逆算して3次元的にパネル位置を設計
その一端が見えるのは、作品を紹介する白いサインボード。
腰をかがめていくと、特定の座標で外形が球体に見え、別々の小さな鋼板に書かれた説明文がつながって見える。
公園の遊具のようなピンク・黄・青の3つのオブジェも同様に、小さなプレートの集積でできているが、視線を移動してピッタリと見えるところを探していくと、どこか見慣れた形が現れる。
一見するとよく分からないオブジェだが、周りを巡っていくと…?
あっ!
ああっ!!
「できるだけインターナショナルで、ボーダレスで、キッズフレンドリーであるもの。カルチャーや時代も飛び越えて、言葉の説明がなくても『あ、これなのか!』と分かるようなアイコンを探しました。
それぞれのオブジェには2つずつの形が隠されているので、歩き回りながらうまく探してください。明らかにヒントとしての記号が地面に置いてあるのですが」と笑う豊田氏。
「今回は子供向けにチューンナップしていますが、3DデータをARと連動させるなどハイコンテクストにはいくらでもできるので、今後はいろいろとやってみたいですね」とも豊田氏は語る。
立ち現れるキャッチーなアイコンの中に隠された、深遠な意味とメッセージ、そして将来性。
視点の転換とともに、モノの見方が変わっていくことも感じられるはず。
そのすべてを体感するため、ぜひ足を運び、動きながら見ていただきたい。
(jk)
会期:10月15日(金)~11月3日(水・祝)
時間:11:00~21:00
会場:東京ミッドタウン 芝生広場
所在地:東京都港区赤坂9丁目7-1(Google Map)
入場料:無料(予約不要)
noiz(ノイズ)
2007年に豊田啓介と蔡佳萱が設立。2016年に酒井康介が参加。建築を軸にインスタレーションから都市まで幅広いジャンルで国際的に活動する建築・デザイン事務所。最新のデジタル技術を駆使した各種デザインや製作、システムの実装から教育、各種リサーチ&コンサルティング活動も積極的に展開する。
https://noizarchitects.com/