ゴールデンウィークの終盤、5月4日「みどりの日」の過ごし方は皆さまお決まりでしょうか?
みどりの日は、国民の祝日に関する法律によると「自然に親しむとともにその恩恵に感謝し、豊かな心をはぐくむ」ことを趣旨とした祝日です。だからこそ、普段はなかなか訪れることのできない緑にあふれる海外の建築を記事で見て、自然を感じてみるのはいかがでしょう。
ここでは、TECTURE MAGでこれまで取り上げてきた建築の中から、既存の自然を活かしてつくる「自然の中の建築」、都市やまちの中に自然の空間をつくり出す「まちの中につくる自然」、建物の中に緑あふれる空間をつくり出す「建物の中につくる自然」に分けて紹介します。
INDEX
- 自然の中の建築
- まちの中につくる自然
- 建物の中につくる自然
自然の中の建築
コスタリカやベトナム、インドネシア、タイに建つプロジェクトでは、その熱帯、亜熱帯の気候特有のトロピカルな自然と共存した建築の姿が見られます。一方で中国のプロジェクトからは、田んぼや竹林といった、日本でも身近な緑に目を向けた建築を紹介します。
![](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2024/04/11185653/0335.jpg)
© Hiroyuki Oki
〈Labri〉
設計:グエン・カイ・アーキテクツ&アソシエイツ(Nguyen Khai Architects & Associates)ベトナムの古都フエに建つ〈Labri〉は、敷地内や屋上にさまざまな植物が植わり、ガラス、つる植物、コンクリートという3つのレイヤで覆われた4つのブロックで構成された森のような住宅。空間を区切る内壁も外界から家を遮る外壁もない空間となっており、常に自然の陽光と風にあふれた涼しくて快適な空間を提供している。
![〈COCOアートヴィラズコスタリカ(COCO | Art Villas Costa Rica)〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/02/14232930/coco-formafatal-archwerk-boysplaynice-33-scaled.jpg)
©︎ BoysPlayNice
〈COCOアートヴィラズコスタリカ(COCO | Art Villas Costa Rica)〉
設計:ARCHWERK.cz、フォルマファタル(Formafatal)太平洋を望むコスタリカのジャングルに建つ、地元の木材とテント用キャンバスで構成されたポッドが特徴的なリゾート施設。
木々や野生生物、自然の気候と直に接することができ、ゲストが周囲の自然と融合し、心を澄ませ、「ラグジュアリー」と「アドベンチャー」を同時に体験できるよう設計されている。
![〈田んぼの中のタワーパビリオン(Tower Pavilion In Paddy Fields)〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/10/13141024/9eb09d39a603feed4ebb049630682f08.jpg)
© Qingshan Wu
〈田んぼの中のタワーパビリオン(Tower Pavilion In Paddy Fields)〉
設計:Jumping House Lab中国の浙江省杭州市の村に建つ、田んぼを会場としたランドアートフェスティバルの開催に合わせて、既存のプラットフォームを活用して作成された建築。
中央の灌漑用水のプールの上に設けたタワーと、その頂部からプラットフォームの端に連結したテントによって構成されており、村の入り口から見えつつ、田んぼに馴染んだ風景をつくり出している。
![〈グエン・コーヒー(Nguyen Coffee)〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/01/19211520/39.jpg)
©︎ Hiroyuki Oki
〈グエン・コーヒー(Nguyen Coffee)〉
設計:ザ・ブルーム(The Bloom)ベトナムの森の中に佇む、現代人の多くが求める自然に満ちた環境でのリラックスした時間を過ごせるカフェ空間。
光の粒が降り注ぐ木材でできたカーテンのような屋根や柱、床は自然素材で構成されている。また、自然の地形をいじることなく建てられているため、この地の生態系に影響を与えることなく解体することも可能な建物となっている。
![〈青渓文化歴史博物館〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2022/10/06150523/9d142d13716a289ae823020a8e298338.jpg)
© Ding Junhao
〈青渓文化歴史博物館(Qingxi Culture and History Museum)〉
設計:UAD(The Architectural Design & Research Institute of Zhejiang University:浙江大学建築設計研究院)中国・浙江省寧海県相州鎮南上郷に位置する、里山のもつ人と自然がつくり出した環境に調和する博物館。周囲の段々畑に呼応した外観や、田舎道のように不規則な通路や空間とし、地元の素材と巧みな職人技を使用することで環境との最大限の調和を生み出している。
![〈タナタップ・リング・ガーデン(Tanatap Ring Garden)〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/11/04120943/000.jpg)
© KIE, Mario Wibowo
〈タナタップ・リング・ガーデン(Tanatap Ring Garden)〉
設計:RAD+ar(Research Artistic Design + architecture)インドネシアにて庭と一体化したさまざまなカフェを提供するタナタップ(Tanatap)のジャカルタ店。既存の樹木を活かしつつ、熱帯の自然に隠れた市民空間として設計された建築となっている。
空間を貫く既存樹木やガラスブロックの外壁が建物の内外を曖昧にしつつ、内部の立体的なガーデンエリアからは都市のスカイラインと熱帯の自然のどちらも体験することができる。
![〈ラヴェル・インターナショナルスクール(Lovell International School)〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/09/28161003/DSC_2572.jpg)
©︎ Rungkit Charoenwat
〈ラヴェル・インターナショナルスクール(Lovell International School)〉
設計:プラン・アーキテクト(Plan Architect)タイ東部のビーチリゾート パタヤに位置する、緑に包まれたツリーハウスのようなインターナショナルスクール。
敷地に植生していた既存の樹木をできる限り残しつつ、その間を通り抜ける曲線を描く建物とその上部の切妻屋根の建物により構成された、内外ともに木に包まれた遊びの空間を提供している。
![〈瞑想と眺望の塔(Tower for Meditation and Views )〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/10/03072256/37c5e859aeee269800e50377d35ea988.jpg)
©︎ Zhi Xia
〈瞑想と眺望の塔(Tower for Meditation and Views)〉
設計:Jumping House Lab中国の浙江省湖州市に建つ、竹林の中にひっそりと佇むアーティスト・コミュニティに建てられた、竹林の上から景色や風を楽しみ、瞑想にふけることができる小さな塔。
無秩序にも見える木製の支柱によって地上6mの高さまでもち上げられ、水田に向かう眺め、瞑想のための空へと向かう眺め、庭に向かう細長い水平の眺めという3種の景色と、内部の仕切りによる「内向き」と「外向き」な2種の体験を提供する。
まちの中につくる自然
都心に自然が不足するという事象は、日本だけでなく世界的に発生しています。そんな都心におけるプロジェクトだからこそ、建築だけでなく自然を生み出すことで都市の喧騒から離れた空間を生み出しているプロジェクトをご紹介。
![](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/11/12175053/024.jpg)
© Mario Wibowo
〈Stalk Tree-hugger〉
設計:RAD+ar(Research Artistic Design + architecture)インドネシアの首都ジャカルタで最も賑やかなビジネス街という立地でありながら、既存の自然への介入を最小限に、樹木を活かしながらつくられた商業施設。
パラメトリックなテント屋根は、内部に無数に変化する光のパターンを生み出しつつ、その特徴的なファサードは夜になるとランタンのように街中に灯る。
![〈オペラパーク(The Opera Park)〉Cobe](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/12/11180014/The-Opera-Park_03_credit-Francisco-Tirado.jpg)
© Francisco Tirado
〈オペラパーク(The Opera Park)〉
設計:Cobeデンマークの首都コペンハーゲンの内港に位置する工業島を活用した、開発の進む賑やかな都市の中に、喧騒から離れた緑豊かな空間を提供する公園。
公園には世界各地をテーマとした6つの庭園と、カフェを併設した温室があり、寒さの厳しい冬であっても活気のある場所として設計されている。また、隣接する〈オペラハウス〉と屋根付きの連絡通路でつながっており、公園の地下駐車場から〈オペラハウス〉へ天候に左右されずにアクセスすることも可能。
![〈パン パシフィック オーチャード(Pan Pacific Orchard)〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/11/07231017/PPO_DSC2274.jpg)
Beach Terrace © Darren Soh
〈パン パシフィック オーチャード(Pan Pacific Orchard)〉
設計:WOHAシンガポールにおける商業の中心地に誕生した、緑あふれる4層の巨大なガーデンテラスにより、部屋だけでなく近隣にも高密度な都市において貴重な眺望を提供するラグジュアリーホテル。
日除としても機能するテラスや水盤による放射冷却などのパッシブデザインを組み合わせることで、シンガポール最高の環境認証を取得している。
![〈リトルアイランド(Little Island)〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/03/09225611/Little-Island-2021_05_20-DSC_9450_CREDIT_Timothy-Schenck.jpg)
©︎ Timothy Schenck
〈リトルアイランド(Little Island)〉
設計:ヘザウィック・スタジオ(Heatherwick Studio)ニューヨーク・ハドソン川の水上に浮かぶ、ニューヨーカーや観光客が都市から離れ、川を渡って木の下に寝転び、パフォーマンスを鑑賞し、夕日を眺め、水や自然界とのつながりを感じられる公園。
川底の岩盤に突き刺さる杭がそのままデッキとなり、プランターにもなる「ポッド」が公園の地面を形成し、高さの異なるポッドが集まることにより独自の地形をつくり出している。
![〈NANAコーヒーロースターズ・バーンナー(NANA Coffee Roasters Bangna)〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/02/13191240/NanaCoffeeRoastersBangna-074.jpg)
©︎ W Workspace
〈NANAコーヒーロースターズ・バーンナー(NANA Coffee Roasters Bangna)〉
設計:IDINアーキテクツ(IDIN Architects)タイのバンコクに建つ、分散したボリュームの隙間に緑が入り込むことで目の前を走る高速道路の喧騒から離れることができるカフェ。
カウンターを部屋の外周に配すことで会話よりもコーヒーに目を向け、凹凸のあるうねるカウンターにより、カップの置き場所に注意を払い、コーヒーに意識を向けるよう設計されている。
![〈HolLA〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2022/09/08161032/SH-Hollywood-SCA-5250.jpg)
©︎ Iwan Baan
〈HolLA〉
設計:セルガスカーノ(Selgascano)アメリカ・ハリウッドに建つ、自然に囲まれたワークプレイスを提供するコワーキングスペース。既存建築の地下構造物を残し、その上に土を敷き詰め、60棟の楕円形のオフィスとさまざまな植物が配置されている。
透明な曲面の壁からは360度に植物を眺めることができ、自然の中で仕事をしているような感覚を味わうことができる。
![〈マギーズ・ヨークシャー〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2022/08/29180847/419765f7f989adbf0ad0f6319d130696-scaled.jpg)
© Hufton+Crow
〈マギーズ・ヨークシャー(Maggie’s Yorkshire)〉
設計:ヘザウィック・スタジオ(Heatherwick Studio)イギリスの病院の敷地内に建てられた、病院内の臨床的な環境から解放されくつろぐことができる、緑に囲まれた建築。キャンパス内に残された数少ない緑地の1つであった敷地にて、緑地を持ち上げ庭そのものを建築とすることで、元の空間を保存し、強調している。
大小さまざまなプランターの集合体として表現されており、それぞれのプランターの底面にはゲストが1人で過ごすためのプライベートな空間、その間のスペースは、グループで会話やアクティビティを楽しむ、リラックスした親しみやすいソーシャルスペースとなっている。
![](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/10/20163125/3_SemiramiscGramazioKohlerResearch.jpg)
Semiramis, Tech Cluster Zug, Switzerland, 2022 © Gramazio Kohler Research, ETH Zurich. Photo: Michael Lyrenmann
〈セミラミス(Semiramis)〉
設計:チューリッヒ工科大学 グラマツィオ・コーラー・リサーチ(Gramazio Kohler Research)開発が進むスイスの新市街地テック・クラスター・ツークの入口に建つ、人工知能を用いて設計し、ロボットを活用したデジタルファブリケーションにより構築した建築インスタレーション。8本の細い鉄柱に支えられた、植生のない高さ22.5mまで立ち上がる5つのCLT製のポッドで構成されている。
テクノロジーを掛け合わせて作成された、自然と人工との間の存在とも言える塔には、人間は立ち入ることはできないため、自然は邪魔されることなく成長するチャンスを得る。また、自然と人間との関係に疑問を投げかけ、考察するインスタレーションであると同時に、その足元に地域で働く人々や住民にとっての隠れ家や集いの場を提供している。
建物の中につくる自然
寒い地域だからこそ多様な植生を生み出す温室や、空港内につくられた森のように建築内に大規模な自然を生み出すプロジェクトから、建物内全体にイミテーショナルな自然環境をつくり出すプロジェクトまで、自然に包まれたさまざまな空間を紹介します。
![〈The Leaf〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/10/16164035/15_TheLeaf_EmaPeterPhotography-scaled.jpg)
©︎ Ema Peter Photography
〈The Leaf〉
設計:KPMBアーキテクツ(KPMB Architects)、アーキテクチャ49(Architecture49)カナダの都市ウィニペグにて、動物園なども展開する広大なアッシナボイン・パークに建てられた、世界のさまざまな気候と自然を体感できる園芸アトラクション施設。
自然界にも多くみられるフィボナッチ数列と自然自体から形成された特徴的な屋根や有機的なフォルムにより、植物のシンプルさと複雑さを同時に表現している。極端な気候の都市で年中さまざまな気候の自然を楽しむことができる。
![〈ジュエル・チャンギ空港(Jewel Changi Airport)〉](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2022/11/16220859/67500_SA_JCA_DarrenSoh_N19_pressjpg-scaled.jpg)
©︎ DarrenSoh
〈ジュエル・チャンギ空港(Jewel Changi Airport)〉
設計:サフディ・アーキテクツ(Safdie Architects)シンガポールの空港につくられた、5階の高さから流れ落ちる水や屋内庭園が特徴的なガラスの空間。
チャンギ空港の既存ターミナルをつなぐように計画されており、空港における交通の要所という主要な機能を、シンガポールの人々や海外からの旅行者のための集いの場へと拡張している。また、庭園内にはマーケットやさまざまなアトラクションが組み込まれており、ショッピングやエンターテイメント、社会活動のための目的地という空港の新しいモデルを確立している。
![Sumsei Terrarium _ NONESPACE](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2022/01/13152346/Sumsei-Terrarium-3F-_-NONESPACE-3-scaled.jpg)
©︎Haneol Kim
〈SUMSEIテラリウム〉
設計:NONESPACE韓国のライフスタイルブランド「SUMSEI」のために設計されたギャラリー。
建物に入る際に靴を脱ぎ、土や水、植物に触れながら地下から地上へとフロアを登ることで感覚が開いていく、建物内をめぐることで自然を体感する瞑想空間。
![](https://magazine-asset.tecture.jp/wpcms/wp-content/uploads/2023/07/24183347/MADE-LIM_HERITAGE-HALL-4.jpg)
HERITAGE HALL ©︎ NONESPACE
〈MADE LIM〉
設計:NONESPACE韓国に建つ120年の歴史を誇る教会を、既存の構造やレンガ、ステンドグラスはそのままに、自然あふれる体験型の展示スペースやベーカリーを含む文化複合施設へとリノベーションした建築。
ブランドの名前でもある〈MADE LIM〉は、文化の森を意味する「MADE 林」と、自然へと回帰しようとする人間のDNAに訴えかける休息を提供する「may-dream」というブランドの理念を反映したものとなっており、時間を宿した、新たな建物ではつくりえない独自のブランドストーリーを構築している。