東京・港区内で森ビルが中心となって進めている大型再開発プロジェクト「虎ノ門ヒルズ」において、主要な建築では最後の1棟となる〈虎ノ門ヒルズ ステーションタワー〉が10月6日に開業しました(一部店舗・施設は来春までに順次開業予定)。
高さ約266mの高層ビルのデザインを、OMAのパートナーでニューヨーク事務所を率いる建築家の重松象平氏が担当しています。
「虎ノ門ヒルズ」全体の区域面積は7.5ha(ヘクタール)、延床面積は792,000m²で、森ビルが手がけた「六本木ヒルズ」に匹敵する規模での新街区誕生です。
『TECTURE MAG』では、10月2日に行われたメディア内覧会を取材。45階にオープンした情報発信拠点・TOKYO NODE(トーキョーノード)開館記念企画「“Syn : 身体感覚の新たな地平” by Rhizomatiks × ELEVENPLAY」の概要を速報しています。このほか、重松氏へのインタビューも後日に掲載予定です。
新街区「虎ノ門ヒルズ」の開発の経緯やタワーのレイアウトなどの全体概要、参画した建築家・デザイナー諸氏のプロフィールは、今年1月に森ビルが発表したプレスリリースに基づいて本誌が今年1月に報じたニュースに準じます(後述)。
本稿では、内覧会で公開されたエリアを中心に、ステーションタワーに入った注目のテナントや見どころについて、地下・地上からのアクセスに沿ってレポートします。
・プロジェクトに参画した建築家・デザイナー
・建築と一体化したパブリックアート ▶︎読む
・新駅・虎ノ門ヒルズ駅に直結したステーションタワー ▶︎読む
・B2階「T-MARKET」/ 商業デザインは片山正通氏率いるWonderwall®️が担当 ▶︎読む
・7階「スカイロビー」 ▶︎読む
・7-8階 飲食のほか理容・美容のサービスを提供する商業ゾーン ▶︎読む
・8階 クリエーターとの共創の場「TOKYO NODE LAB」▶︎読む
・11-14階 アンバウンドコレクションby Hyatt「ホテル虎ノ門ヒルズ」が東京初進出(12月6日開業) ▶︎読む
・45階 新たな情報発信拠点「TOKYO NODE」 ▶︎読む
・最上階 眼前に皇居の緑が広がるインフィニティプール ▶︎読む
・世界トップレベルのシェフが手がける2つのレストランがオープン予定 ▶︎読む
・データシート ▶︎読む
デザイン:重松象平(OMA)
歩行者デッキ:Ney &Partners(ネイ&パートナーズ)
外装照明(ランドスケープ含む):L’Observatoire International
内装照明(共用部):Arc Light Design
内装照明(ホテル):Light iQ
T-MARKET(B2階)商環境デザイン:片山正通 / Wonderwall®︎
商業共用部デザイン(2階-5階、7階):大野 力 / sinato
ホテルインテリアデザイン:Space Copenhagen
「TOKYO NODE」ロゴデザインほか:中村勇吾 / THA
「虎ノ門ヒルズ」が2023年秋に全面開業、重松象平氏がデザインしたOMAとして都内で初の大規模建築〈虎ノ門ヒルズ ステーションタワー〉が7月に竣工
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桜田通りの上に架けられた、、ネイ&パートナーズがデザインを手がけた幅員20mの歩行者デッキ「T-デッキ」を渡り、既存の低層棟〈グラスロック〉からステーションタワーへと向かうと、大型のパブリックアートが目に入ってきます。
このアート作品は、米国出身のアーティスト、レオ・ビラリール(Leo Villareal)によるもので、彼が日本で手掛けた初のパブリックアートとなります。
ビラリールは、サンフランシスコ・オークランド・ベイブリッジの「ザ・ベイライト(The Bay Lights)」や、ロンドンのテムズ川に架かる9つの橋のアートワーク〈イルミネーテッド・リバー(Illuminated River)〉などの作品で知られている作家です。
このほかにも、1階とB2階のシャトルエレベーターホールや7階スカイロビー、さらには屋外にも、国内外のアーティストによる作品が展示されています。
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ステーションタワーは、駅と街との一体的な開発によって計画されているのが大きな特徴です。
タワーB2階に直結して、東京メトロ日比谷線では56年ぶりとなる新駅「虎ノ門ヒルズ」駅が2020年6月6日に開業。約2,000m²の規模で地下鉄駅前広場「ステーションアトリウム」も整備されました。
都市機能と交通機能が連携・補完しあうことで生まれた3層吹き抜けの「ステーションアトリウム」には、自然光が注ぎ込み、これまでの日本の地下鉄駅にはなかった、明るく開放的な空間となっています。
「ステーションアトリウム」に設置された大型デジタルメディアでは、ダイナミックな映像演出を展開。日々さまざまな新しい情報に触れられる刺激的な場所となるよう設計されています。
イベントスペースや商業ゾーン「T-MARKET」(後述)も直結・連続しており、人々で賑わう空間となります。
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「ステーションアトリウム」に直結した商業ゾーン「T-MARKET」は、片山正通氏率いるWonderwall®︎(ワンダーウォール)が商業環境デザインを担当。「都市の入口に中庭を開く」をコンセプトに掲げ、「食を中心とした賑わいの庭」を創出しました(一部の店舗・計13店舗は11月24日にオープン)。
「T-MARKET」では、日々の生活の中でふと立ち寄りたくなるような、訪れると気持ちが自然と切り替わる状況づくりや、居心地の良い空気感を創出。さらには1日を通して変化する照明や音響によって、空間に陰影と時間軸をもたせ、訪れた人々の過ごし方を定義しない新しい商空間の在り方を提案しています。
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上層階との結節点となる「スカイロビー」は地上46m・タワーの7階部分に位置しています。地下2階「ステーションアトリウム」と車寄せがある1階のエントランスのそれぞれからシャトルエレベーターでダイレクトにアクセスが可能です。
なお、ステーションタワー7階と、10月2日のメディア内覧会では公開されなかった2階から5階の商業共用部のデザインは、大野 力氏率いるsinatoが担当しています。
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8階のカフェ&バー〈TOKYO NODE CAFE〉の奥には、森ビルによって「TOKYO NODE LAB」が開設されました。ステーションタワー45階にある3つのギャラリーにて、10月6日より開催中の「TOKYO NODE 開館記念企画 “Syn:身体感覚の新たな地平” by Rhizomatiks × ELEVENPLAY」に連動したARアプリを開発したのはこちらのラボです(アプリの詳細)。
「TOKYO NODE LAB」は、最新のボリュメトリックビデオ[*1]のスタジオ「TOKYO NODE VOLUMETRIC VIDEO STUDIO」を有しているのが特徴です。森ビル、キヤノン、バスキュール、日本アイ・ビー・エムの4社協業によって、最新の制作技術を誇ります。
今後はラボに参画している企業やクリエイターらとのコラボレーションにより、xR(VR・AR・MR)コンテンツの企画・制作・配信を予定。映像体験のさらなる価値向上を図るとのこと。
なお、日本アイ・ビー・エムは、ステーションタワー31、32階のオフィスフロアに、日本橋箱崎町にある本社を来年1月に移転することを先ごろ発表しています(2023年10月3日プレスリリース)。
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ステーションタワーの11階から14階、および1階の一部には、ハイアットのインディペンデント・コレクション・ブランドの1つ、「アンバウンド コレクション by Hyatt」として東京初進出となる〈ホテル虎ノ門ヒルズ〉が12月6日に開業します。
10月2日のメディア内覧会では、11階にある以下3タイプの室室が公開されました。
・パノラマ コーナースイート タワービュー(65m²)
・プレミアム シティビューキング(40m²)
・デラックス ツイン(32m²)
上記を含む館内の全205室と、料飲施設などホテル空間の全てのインテリアデザインは、デンマークのデザイナーユニット、スペース・コペンハーゲン(Space Copenhagen)」が担当しました。2005年にシーネ・ビンズレヴ・ヘンリクセン(Signe Bindslev Henriksen)とピーター・ブンゴー・ルッツゥ(Peter Bundgaard Rützou)の両氏が設立したスタジオで、今回が日本における初のプロジェクトとなります。
デザイナー・コメント
「私たちは若い頃から、日本に特別なつながりを感じ、日本の美的感覚から多くのインスピレーションを得てきました。デンマークの伝統と日本の美的感覚の間には、相互関係のようなものを感じています。ホテルのあらゆる空間は、北欧そして日本の人々にとってもオーセンティックだと感じてもらえるはず。旅行者が精神的にも充電できる客室をつくりたいと考えました。」(スペース・コペンハーゲン)Space Copenhagen Website
https://spacecph.dk/
スペース・コペンハーゲンは、手に触れることで心地良さを感じる素材やディテールにこだわり、「抑制のきいたタイムレスでミニマルな客室空間」を実現しています。虎ノ門というアクティブな街とゲストが関わるなかで、客室は自然体で過ごすプライベートな空間であり、客室に入ると心が落ち着き、自宅に帰ってきたような感覚を大切にして設計したとのこと。
施設概要
名称:ホテル虎ノ門ヒルズ(HOTEL TORANOMON HILLS)
所在地:東京都港区虎ノ門1丁目6-4 虎ノ門ヒルズ ステーションタワー内(Google Map)
ホテルフロア:ステーションタワー 1階の一部、11階-14階
客室数:205室(スイート30室を含む)
館内施設:客室、ラウンジ、
料飲施設:ル・プリスティン東京(Le Pristine Tokyo)※日本初進出
インテリアデザイン:スペース・コペンハーゲン(Space Copenhagen)※日本初プロジェクト
運営:ハイアット
開業予定日:2023年12月6日(水)詳細・予約受付 / ハイアット(Hyatt)ウェブサイト
https://www.hyatt.com/ja-JP/hotel/japan/hotel-toranomon-hills/tyoub/rooms
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前述の8階「TOKYO NODE LAB」のほか、45階から49階の最上層フロアを占めるのが、新たな情報発信拠点「TOKYO NODE」です。
「TOKYO NODE」公式サイト
https://www.tokyonode.jp/
「TOKYO NODE」は、座席数338席のメインホールを47階に備え、現在は開館記念企画となる「“Syn : 身体感覚の新たな地平” by Rhizomatiks × ELEVENPLAY」を開催中のA/B/Cの3つのギャラリーを有します。レストランなどを含めた総面積は約10,000㎡となり、それぞれ単体での利用できるのはもちろん、これらの施設を連結させた回遊型の利用も可能となっています。
49階(屋上)には、後述するインフィニティプール付きのスカイガーデンがあり、都内でも屈指の眺望を誇ります(注.49階の利用・入場はレストランの利用者および対象イベントの参加者に限定される)。
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SNSなどでその眺望が早くも大きな話題となっている、「TOKYO NODE」を象徴する場所の1つが、最上階・49階に設けられたオープンエアのスカイガーデンとインフィニティプールです。
こちらの「TOKYO NODE SKY GARDEN & POOL」のプールを挟んだ両サイドには、「apothéose(アポテオーズ)」が11月に、「KEI COLLECTION PARIS」が2024年1月にオープンを予定しています。
この2つのレストランや、47階のホール、45階のギャラリーなどを一体的に活用したイベント(例えば、ファッションショーやガーデンパーティーなど)も開催することができるため、従来のカンファレンス施設やバンケット施設とは一線を画した、極めてユニークな集客施設となっています。
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インフィニティプールを挟んだ東西側には、2つのレストランがこのあとオープンします。
西側の店舗は、パリでアジア人初となるミシュランフレンチ3つ星を獲得した小林 圭氏が監修するグリルレストラン「KEI COLLECTIONS PARIS」(2024年1月開業予定)。東側には、フランスの店で2019年にミシュランガイドフランスの1つ星を獲得したシェフ、北村啓太氏が常駐するキュイジーヌ「apothéose」です(2023年11月開業予定)。
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本稿の冒頭で触れた、同規模の街区となる「六本木ヒルズ」と比較して、就業人口は倍の約30,000人、居住人口はほぼ同じ約1,800人(六本木ヒルズは約2,000人)と森ビルでは試算しています。緑化面積は「六本木ヒルズ」を上回る約21,000m²を有し、多様な都市機能が徒歩圏内に集約されたコンパクトシティが誕生しました。
このあとも、さまざまな店舗・施設が順次開業を迎えます。
今後の主な開業スケジュール
・2023年11月24日(金) B2階 商業ゾーン「T-MARKET」南側ダイニング
・2023年12月6日(水) ホテル虎ノ門ヒルズ 開業
・2024年1月16日(火) 地下2階のデイリーフードとショップのエリア(3店舗)、2階のテラスダイニングゾーン(2店舗)、4階 商業店舗(20店舗)第二弾オープン
・2024年2月29日(木) 2-3階 大型ファッションセレクトショップ〈SELECT by BAYCREW’S(セレクト バイ ベイクルーズ)〉オープン(告知)
・2024年4月 5階 都心最大級のウェルビーイング施設〈CARAPPO〉オープン(告知)
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※本稿の画像、特記なきものは全て、TEAM TECTURE MAG 撮影
虎ノ門ヒルズステーションタワー(A街区)
所在地:東京都港区虎ノ門2丁目6−1(Google Map)
構造:S造(一部SRC造、RC造)
基本設計:森ビル 一級建築士事務所
実施設計:森ビル 一級建築士事務所
デザイナー:OMA ほか
施工:鹿島建設、きんでん、三建設備工業、日立ビルシステム
施行:虎ノ門一・二丁目地区市街地再開発組合
着工:2019年11月
竣工:2023年7月
開業日:2023年10月6日(一部フロアと店舗を除く)
事業名称:虎ノ門一・二丁目地区第一種市街地再開発事業
所在地:東京都港区虎ノ門1丁目、2丁目の一部
施行区域面積:約2.2ha
敷地面積 約13,960m²
建築面積 約10,730m²
延床面積 約253,540m²
・虎ノ門ヒルズ ステーションタワー:約236,640m²
・グラスロック:約8,800m²
・虎ノ門ヒルズ 江戸見坂テラス:約8,100m²
用途:
・虎ノ門ヒルズ ステーションタワー:事務所、店舗、ホテル、情報発信拠点、駐車場ほか
・グラスロック:店舗、駐車場ほか
・虎ノ門ヒルズ 江戸見坂テラス:事務所、住宅、店舗、駐車場ほか
階数:
・虎ノ門ヒルズ ステーションタワー:地上49階+地下4階
・グラスロック:地上4階+地下3階
・虎ノ門ヒルズ 江戸見坂テラス:地上12階+地下1階
高さ:
・虎ノ門ヒルズ ステーションタワー:約266m
・グラスロック:約30m
・虎ノ門ヒルズ:江戸見坂テラス 約59m
ビジネスタワー、レジデンシャルタワー 建築デザイン:クリストフ・インゲンホーフェン(インゲンホーフェン・アソシエイツ)
虎ノ門ヒルズレジデンシャルタワー、アンダーズ東京、虎ノ門ヒルズレジデンス(共用部)インテリアデザイン:トニー・チー
虎ノ門ヒルズ森タワー デザイン:日本設計
#森ビル 公式YouTube「虎ノ門ヒルズムービー2023|WELCOME TO TORANOMON HILLS TVCM30秒Ver.」(2023/10/06)
虎ノ門ヒルズ ウェブサイト
https://project.toranomonhills.com/