東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHTにて、企画展「Material, or 」が7月14日より開催されます(以下、関係者の敬称略)。
本展は、TAKT PROJECTを率いるデザイナーの吉泉 聡を展覧会ディレクターとして迎え、この世に存在するありとあらゆる「マテリアル」、「もの」と「素材」の関係に着目する企画展です。
有史以前から人間が営んできた自然との多様な関わり方を、アートやデザイン、人類学の観点から紐解くことで、私たちとマテリアルのつながりを、地球をめぐる果てしなく広大な物語から読み解き、再発見することを、本展を通して試みます。
展覧会概要
普段の生活で接する「もの」のほとんどは、人によってデザインがなされています。ディレクターの吉泉は、これら「もの」がつくられる過程には、この世界に存在するありとあらゆる「マテリアル」が、「素材」として意味づけされるプロセスが含まれていると述べています。つまり、特定の意味を持たなかった「マテリアル」が、人や生物との関わりの中で、「もの」へとつながる意味を付与され、「素材」となるのです。「マテリアル」と「素材」は本来同義ですが、本展では先述のように使い分けて考えていきます。
私たちがものについて考えるときに、誰かが意味付けをした素材について意識を巡らすことがあったとしても、マテリアルまで立ち戻ることはほどんどありません。合目的的に「座りやすそうな木製の椅子」と捉えることはあっても、原初的な感覚として「生命感のある木」まで立ち戻って思いを巡らせることはまれです。本来、意味とはマテリアルとの対話から立ち現れるものであったはずです。私たちは有史以前からマテリアルと共に暮らし、密接な対話を通してものをつくり、暮らしを営んできました。しかし現代社会においては、一部のつくり手がデザインを担うことで、多くの人にとってマテリアルとのつながりは「つくる/つかう」という視点から断ち切られています。
また、マテリアルとの対話とは、マテリアルを管理することとは異なります。つくり手の思ったとおりのかたちや機能をデザインすること、つまり、つくり手の思ったとおりの素材とすることが、必ずしも人とマテリアルとのよい関わり方とは言えないでしょう。むしろ、さまざまな環境問題が提起される現代だからこそ、一度素材の意味を剥ぎ取り、マテリアルとの原初的な感覚のやり取りから、その背後にある自然環境や社会環境の持続可能性まで含めて、身体的で深い対話がなされるべきだと考えられます。
本展では、企画協力に芸術人類学者の石倉敏明、バイオミメティクスデザイナーの亀井 潤を迎え、これまでに人間が営んできた自然との多様な関わり方をアートやデザイン、人類学の観点から紐解くと同時に、最先端のマテリアルサイエンスが我々の感覚をどのようにアップデートしてくれるのかも紹介していきます。
ディレクターズ・メッセージ
小枝を手にすれば「パキッ」っと、折ってみたくなる。
どろどろの泥を手にすれば「ベター」っと、何かに塗ってみたくなる。
大きな石ころを手にすれば、何かにぶつけてみたくなる。そして「パカッ」っと、割れる。そんなマテリアルとの原初的な関わりは、人とマテリアルとの対話のようです。
人間はそうして地球資源との対話を積み重ね、マテリアルから人工物としての何かをつくり出してきました。マテリアルを軸にデザインという行為を捉えた時、その対話そのものがデザインだったといえるかもしれません。それは、特定の意味を持たなかったマテリアルが、人との関わりの中で、なんらかの意味をもった創造のための「素材」となり、人工物が生まれていくという事です。その意味の生み方こそが、デザインの可能性、叡智でもある──。
そして、その意味のあり方は無限なのです。
それは一方で、私にとっての素材は誰かにとっての素材ではない場合があり、同様に、誰かにとっての素材は、私にとっての素材ではない可能性を含んでいます。ところで、その「私」と「誰か」とは何でしょうか?
さまざまな次元での環境破壊、地球資源の問題が指摘されています。
人間が自然を管理出来るという20世紀的な発想は、地球環境との対話をやめ、自身の都合だけで、マテリアルに一方的に意味を「与える」態度だったと言えるかもしれません。また、一部の人だけがつくり手となる事で、多くの人がマテリアルに触れる事が減り、文字通りその対話をやめてしまったようです。そこでは、「私」以外の他の「誰か」への眼差しがこぼれ落ちていきます。それらがもたらしたのは、私を超えたさまざまな存在を感じる、知覚の低下だったように思います。しかし、「私」と「誰か」の境界はそもそも曖昧です。むしろ、「私」は単独で存在するのではなく、さまざまな要素と常に絡まり合うように存在し、変化し続けている──。そのように考えていくべきではないでしょうか。すると、その「私」と「誰か」という定義、そしてその境界は随分と曖昧になり、変わっていきます。と同時に、マテリアルへの眼差し、つまりそこで発生する意味も、自ずと変わってくるはずです。
この展覧会では、マテリアルに「素材」という意味が生まれる方法の多様性を入り口に、人間以外の多様なものとの絡まり合いの中でのマテリアルの捉え方、そしてそのデザインの可能性について考えます。
吉泉 聡
吉泉 聡(よしいずみ さとし)プロフィール
TAKT PROJECT代表。デザイナー。
既存の枠組みを揺さぶる実験的な自主研究プロジェクトを行い、ミラノデザインウィーク、デザインマイアミ、パリ装飾美術館、21_21 DESIGN SIGHT、香港M+など、国内外の美術館やデザインの展覧会で発表・招聘展示。その研究成果を起点に、様々なクライアントと「別の可能性をつくる」多様なプロジェクトを具現化している。
Dezeen Awards 2019(イギリス)にて「Emerging Designers of the Year」に選出、Design Miami/ Basel 2017(スイス)にて「Swarovski Designers of the Future Award」に選出など、国内外のデザイン賞を多数受賞。3つの作品が、香港M+に収蔵されている。
iFデザイン賞審査員(2023年)、グッドデザイン賞審査委員(2018年-)。東北芸術工科大学客員教授、武蔵野美術大学基礎デザイン学科非常勤講師。TAKT PROJECT Website
https://www.taktproject.com/ja/
展覧会ディレクター:吉泉 聡(TAKT PROJECT)
企画協力:石倉敏明、亀井 潤
グラフィックデザイン:三澤 遥(日本デザインセンター)
会場構成:中村竜治(中村竜治建築設計事務所)
テキスト:山田泰巨
コピーライティング:磯目 健(日本デザインセンター)
参加作家:ARKO、青田真也、ACTANT FOREST、イ・カンホ、上田勇児、遠藤 薫、太田 翔、小野 栞、金崎将司、亀井 潤(Amphico)、ゾフィア・コラー、TAKT PROJECT、 DRIFT、永沢碧衣、似里 力、畑中正人、ピート・オックスフォード、Formafantasma、BRANCH、本多沙映、三澤 遥+三澤デザイン研究室、𠮷田勝信
参加企業:Cruz Foam、三菱ケミカル、村山耕二+UNOU JUKU by AGC
会期:2023年7月14日(金)〜11月5日(日)
休館日:火曜
開館時間:10:00—19:00(入場は18:30まで)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
所在地:東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン(Google Map)
入館料:一般 1,400円、大学生 800円、高校生 500円、中学生以下無料
主催:21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援:文化庁、経済産業省、港区教育委員会、オランダ王国大使館
特別協賛:三井不動産
本展詳細
https://www.2121designsight.jp/program/material/
※本展会期中の関連イベントは、詳細が決まり次第、公式ウェブサイトおよびSNSにて随時発表されます
クリエイターズトークvol.1 イ・カンホ × 吉泉 聡
日時:2023年7月15日(土)11:00-12:30
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
登壇:イ・カンホ、吉泉 聡
モデレーター:山田泰巨
言語:日本語
特別協賛:三井不動産
クリエイターズトークvol.2「Material, or 」との対話
日時:2023年7月29日(土)14:00-16:00
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3
登壇:吉泉 聡、三澤 遥、中村竜治
言語:日本語
特別協賛:三井不動産
関連プログラム詳細・申込受付ページ
https://www.2121designsight.jp/program/material/events.html
21_21 DESIGN SIGHT Website
www.2121designsight.jp
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