8月は、各地で設計やデザインの出発点に触れることができる展覧会が開催されています。建築の原点には、必ず設計者の「問い」があります。社会に対して何を問うのか、そしてその問いをどう空間として表現するのか。藤本壮介氏による太宰府の仮殿、防災を再構成する展示、若手建築家たちの挑戦、内藤廣氏の40年分の思考を記した手帳展示など、建築やデザインを“始まりの視点”から見つめ直すきっかけに触れてみませんか。
建築の未来を担う若手建築家20組による展示会。各チームが自ら設定した問いに取り組み、模型・ドローイング・プランを通じて建築の役割と立脚点を問い直します。KIRI ARCHITECTSやNiimori Jamison、ナノメートルアーキテクチャーらが参加し、社会・場所・利用者を視点に据えた実験的な提案が並びます。展示はドキュメンタリー形式で構成され、設計プロセスの苦闘やチームの思考の痕跡が見える化されている点が大きな魅力。批評精神と創造性が交差する刺激的な展示です。
新しい建築の当事者たち
会期:2025年7月24日(木)~ 2025年10月19日(日)
会場:TOTOギャラリー・間
東京・紀尾井清堂にて開催中の「建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ」は、40年以上にわたる内藤氏の思考の軌跡をたどる展覧会です。1階では東日本大震災への鎮魂として、1万8800個のガラス片によるインスタレーションが静謐な祈りの場を創出。2階では、内藤氏の著書から抽出した印象的な言葉が曼荼羅のように並び、思考の断片を視覚化します。圧巻は3~5階に展示された約40年分の手帳群。図面やスケッチ、日々の記録が時系列で並び、建築家の感性と日常が立体的に浮かび上がります。展示と建築空間が融合した本展は、建築家の内面世界に深く触れられる貴重な機会です。
建築家・内藤廣 なんでも手帳と思考のスケッチ in 紀尾井清堂
会期:2025年7月1日(火)~ 2025年9月30日(火)
会場:倫理研究所 紀尾井清堂
この夏、建築家・内藤廣氏による関連展示が注目を集めています。7月のまとめ記事でもご紹介した「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘 in 渋谷」展について、TECTURE MAGでは現地取材をもとにレポートを作成しました。展示の見どころだけではなく、会場構成の詳細や内藤氏へのインタビューも交え、建築の裏側にある思索に迫った内容となっています。ぜひご来場前の参考にご覧ください。
太宰府天満宮では本殿大修理期間中の仮殿(仮殿殿/仮殿)を舞台に、藤本氏が設計した「kariden(仮殿)」の制作過程を初公開しています。図面や模型、写真で建築の構想をたどりつつ、「浮遊する森」を想起させる植物と光の演出が重なり、歴史ある神社の神聖な空間に現代建築の詩性が融合しています。仮殿という一時的な場が、修理の文脈とともに宗教・芸術・建築を横断し、訪れる者に新鮮な視点を届ける、歴史と建築の対話を体感できる展示です。
藤本壮介展―太宰府天満宮仮殿の軌跡―
会期:2024年8月10日(土)〜 2025年9月15日(月・祝)
会場:太宰府天満宮宝物殿 企画展示室
本展では、「災害」をデザインの視点から読み解き、被災地の現場で実際に役立ったモノ、知恵、仕組みに注目し、衣・食・住・情報など生活の基盤に焦点を当てた展示が展開されています。会場には「安全な場所とは?」「災害をどう知る?」といった問いが散りばめられ、来場者自身の視点で答えを考える参加型コンテンツが多数設置されているほか、WOWが手がける回答型インスタレーションも楽しめます。災害大国・日本で生まれたリアルな工夫や支援のかたちをデザイナーが再構築し、未来の備えと希望を可視化した、過去から未来へとつながる防災思考を体験的に学べる場となっています。
そのとき、どうする?展 –防災のこれからを見渡す–
会期:2025年7月4日(金)~ 2025年11月3日(月・祝)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
ルイ・ヴィトン創業170周年を記念して開催される本展は、美術史家兼キュレーターのフロランス ・ミュラー氏が制作協力し、OMAの重松象平氏がデザインを担当。草間彌生や村上隆など著名アーティストとのコラボ作品を中心に約180点を展示され、バッグやスカーフなどファッションプロダクトに込められた芸術的表現や、限定オブジェも出品。ブランドとアートの多層的な関係が視覚的に再構成され、ヴィトンが長年育んできた創造性と美意識を体感できる空間となっています。
ルイ·ヴィトン「ビジョナリー·ジャーニー」展
会期:2025年7月15日(火)〜 2025年9月17日(水)
会場:大阪中之島美術館 5階展示室
参照元:太宰府天満宮「境内美術館」ウェブサイト、一般社団法人倫理研究所ウェブサイト、21_21 DESIGN SIGHTウェブサイト、TOTOギャラリー・間、中之島美術館ウェブサイト
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