■街なかの公園に現れた 森の小路(こみち)のようなトイレ
公益財団法人日本財団が中心となり、デザイン性が高く、多様な社会に対応した新しい公共トイレを設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」が、昨夏より渋谷区内で進められています。
6月24日には、隈研吾氏のデザインによる鍋島松濤公園トイレ〈森のコミチ〉について、隈氏本人が現地で解説するメディア向け内覧会が開催されました。
■コンセプト
緑豊かな松濤公園に、集落のような、トイレの村をデザインした。ランダムな角度の耳付きの杉板ルーバーに覆われた5つの小屋は「森のコミチ」で結ばれて、森の中に消えていく。
多様なニーズ(子育て、身だしなみ配慮、車いす等)にあわせて、村を構成するひとつずつのトイレの、プラン、備品、内装も異なる。そのいろいろな個室を分棟とすることで、ポストコロナの時代にふさわしい、公園に開かれた風通しの良い、通り抜けのできる「公衆トイレの村」ができあがった。トイレにも多様性の時代、森の時代がやってきたのである。
まず隈氏は日本財団の笹川順平常務理事とともに、完成したトイレを見ながら出来栄えを確認。
続けて、隈氏は笹川常務とともにトイレを設計した背景や狙いを説明しました。
撮影:TECTURE MAG _jk / 動画編集:toha
※ 複数のプレスが一斉に撮影し質疑応答を行ういわゆる「囲み取材」で、公園内の音声や公園脇を通る自動車などの音を拾っています。
※ この動画は、TEAM TECTURE MAGが撮影した内容について速報性を重視し、掲載しております。
隈氏と笹川氏は、プレスからの質問に回答しました。
当日なされた質問は、次のとおり。
Q. THE TOKYO TOILETプロジェクトは、どのような可能性を秘めているか?
Q. THE TOKYO TOILETのほかのトイレの感想は?
Q. 子どもたちが建築物を楽しむアドバイスは?
Q. メンテナンスのしやすさの工夫は?
Q. これから全国に広げるような取り組みは?
Q. 世界に向けて、これからのトイレのあり方は?
Q. 高級住宅街での調和を意識した?
Q. 地域の問題を解決することは考えた?
Q. 段差があるトイレは珍しいが、設計や施工で難しかったことは?
Q. できてみての率直な感想は?
Q. 吉野杉の抗菌効果は期待した?
質問に答える中で、隈氏は次のように述べました。
「人間には多様性があり、そうした社会をどうデザインしていくか。
トイレはいろんな問題が集約されていることを、最もクリティカルに教えてくれる施設。
このようなトイレは、すでに世界に波及していると思う」。
渋谷・松濤の地に残る緑豊かな環境にあって、これからの人と自然の関係や人間の多様性を柔らかく包み込むようなトイレ。
小規模ながら多様性に富む建築物は、隈氏の柔軟な思考とスタンスによって導き出されたことが実感できました。
(jk)
THE TOKYO TOILET 鍋島松濤公園トイレ〈森のコミチ〉
所在地:鍋島松濤公園(渋谷区松濤2-10-7)内THE TOKYO TOILET 公式ウェブサイト
http://tokyotoilet.jp/